放射線科学センターの役割

 高エネルギー加速器はその運転に伴って種々の放射線(X・ 線、中性子線、ミューオン等)を発生します。 放射線科学センターでは、KEK内の放射線管理区域内で作業する全ての方の無用な作業被曝を抑え、 安全を確保するための管理業務を行っています。
 加速器は法令で規制される放射線発生装置の一種であり、運転するためには放射線安全が担保されていることを国に示して許可を得る必要があるため、放射線管理はKEKの研究活動を発展させるための必須業務と言えます。放射線科学センターは、電子加速器、陽子加速器、放射光源等のユニークな施設の放射線安全管理を通じてKEKが推進する研究プロジェクトの一旦を担っています。
 また、放射線科学センター内の環境計測部門では加速器開発や実験に使用する化学物質に関わる総合的な安全管理、分析法の開発を行っています。更に環境安全管理室として、作業者の健康被害を予防するための作業環境管理や環境報告書作成等の環境安全管理に関する業務についても行っています。


加速器施設の放射線管理

 加速器施設における放射線管理では、加速器が発生する放射線の種類と強さが加速粒子の種類、エネルギー、電流値、あるいは装置のコンディションにも依存するため、加速器の特性を理解して適切な管理手法を検討することが求められます。
 一方、KEKの加速器はビーム出力(ビームエネルギーと電流値の積)を年々高めており、従来の放射線安全の知見では解決できない未知の問題に直面することもあります。このためKEKの放射線管理業務には、施設の放射線測定や測定機器の管理等の業務に加えて、将来の加速器放射線防護を見据えたR&Dも含まれます。当センター研究活動に興味がある方はHP(http://rcwww.kek.jp/research/index.html)をご覧下さい。

技術職員の業務

 当センターには10名の技術職員(つくばキャンパス:7名、東海キャンパス:3名)が在籍しており、各々の個性・得意分野を活かしながら業務に臨んでいます。仕事の分野が多岐に渡るため新任職員には以下に列挙した様な仕事に関わることで幅広く知識と技術を習得してもらいます。
 ・加速器運転時・運転停止時における施設の放射線量測定
 ・放射線モニタリングシステムの管理・開発
 ・放射線測定器機等の管理
 ・放射化物の管理
 ・管理区域出入監視システムの管理・開発
 ・加速器放射線防護に関わる技術開発
 ・排水の水質監視
 ・化学薬品、実験系廃棄物の管理
 ・作業環境管理
 ・環境安全管理に関する技術指導、助言
 ・環境報告書の作成
 採用段階での専門分野は必ずしも重要ではありません。業務遂行には加速器科学と放射線科学の両方の知識、または化学安全に関する知識が必要になるため、これらに興味がある方には最適な職場だと考えます。

 業務紹介

放射線量測定

 放射線量測定は放射線管理上の最も重要な業務の一つです。当センター新任職員は本業務を通じて測定器の使い方等の放射線管理のための基礎知識を身に着けます。 測定は加速器運転中・停止中の両方において行われます。どの位置の放射線レベルが高いか、前回測定時と比べて放射線の強度や分布がどう変わったかなどの情報を収集し、遮蔽設計等の被ばく低減策の検討に役立てます。また、加速器施設の放射線量は、加速器の運転方法によっても変化するため、ここで取得したデータは加速器開発側にとっても有益な知見となり得ます。

放射化物の管理

 加速器を運転すると、その本体や周辺の物品が放射化して放射能を持つことがあります。加速器本体の構成物が加速器として使われているうちは、どんなに強い放射能を持っていても個別の管理は必要ありません。しかし、例えば新しいものと交換するために取り外されたマグネット等が放射能を持っていた場合は、放射性廃棄物として処分するか、捨てずに保管する場合は放射化物として管理する必要があります。これらの廃棄処理、放射化物の管理登録を行うのも当センターの仕事です。
 放射化物は法令に定められた管理項目がありますので、それらを専用のDBで登録・管理を行っています。ハンディターミナルを使って現場で登録することもでき、管理用バーコードを発給して放射化物に貼付することもあります。

放射線モニター開発

 放射線科学センターでは加速器からの漏洩放射線を連続して監視するための連続放射線集中監視システム(NORM)を導入し、放射線安全に万全を期しています。NORMには約200台の放射線モニターが接続されており、KEK各所で放射線レベルを連続測定しています。
 右の写真は技術職員が開発した「数え落としのない中性子線用モニター」です。加速器からは短時間に大量の放射線が生成するため、通常の測定器では「数え落とし」の影響により正しく測ることができません。本測定器は、積分型読み出し方式を採用することで「数え落とし」なく測定できることを可能にした高エネルギー加速器施設のための放射線モニターです。

排水の水質監視

 機構からの排水は、毎月1回水質検査を行い、条例で定める42項目について排出基準を満たしているかどうか確認しています。また、機構内には広い敷地内に多数の実験施設が分散しているため、主要な建物ごとに監視地点を設けて排水の検査を行うことで、きめ細かい排水監視を行っています。
 実験や研究により発生した廃液は実験廃液処理施設へと集められ、廃液の種類に応じた処理を行い、水質確認をし、下水道へ汚染した水が排出されないよう管理をしています。 更に、放射線管理区域から排出される廃水においては、水の放射化も問題となります。そこで、化学安全の担当者と放射線安全の担当者とが連携をし、排水基準値を満たすよう処理を行い、水質確認を行うことで安全を担保しています。

化学薬品等の管理

 環境安全管理室では、化学薬品等の取り扱い(入手、保管、使用、廃棄)における安全衛生管理業務を担っています。特に毒物・劇物に関しては薬品容器毎に保管場所や所有者等の情報を記録した、専用のバーコードラベルを発行し、保管状況を管理しています。また、定期的に化学薬品等使用状況調査や毒物・劇物残量確認調査を行い、化学薬品の所有者が適切に管理をしているかを監視し、不適切な際には指導・助言を行っています。

作業環境管理

 労働安全衛生法に定める有機溶剤または特定化学物質を取り扱う場合、作業場に対する作業環境測定(当該化学物質の空気中の濃度測定)及び作業者に対する特殊健康診断が義務付けられています。化学実験棟水質検査室で行われる水質検査業務のうち、n-ヘキサンを取り扱う作業、及びSTF棟内電解研磨設備において電解液として硫酸とフッ化水素酸の混酸を使用する作業が有害業務に該当し、定期的に作業環境測定を行っています。

先輩職員の声@

 2005年に採用され、環境安全管理室に配属されました。物理学の研究所にあって希少な化学の部門です。環境に対する意識が高まる中、機構の研究活動が地域住民の方々に不安や心配を与えることがないよう、化学薬品の管理や実験廃液の処理、排水の分析などを行っています。また、研究者の健康被害を防ぐための作業環境測定も行っています。各種分析装置が揃っているため、研究者や職員から分析や相談を受け付けており、実験や施設管理に化学的な視点から貢献しています。
 私は就職活動の際、『生活しやすい適度な田舎』という条件で候補を絞りました。一昔前までは陸の孤島と言われたつくばですが、今では東京へのアクセスも良く、現在進行形で発展している街です。
 現在、3人の子育て中ですが、都内に住んでいたら、子供は2人が限界だったように思います。今の職場では、子育てに対する理解もあり、周囲の協力を得つつ、なんとか仕事と家庭を両立させています。様々なライフイベントに左右されず、長く働ける職場だと思います。


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