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KEK

所長あいさつ

物質構造科学研究所は文部科学省所轄の大学共同利用機関17機関のひとつとして1997年に創設されました。大学共同利用機関は優れた研究設備や研究者集団を活かすことによって、国立大学等を中心とした学術研究を先導する研究機関であり、先端性や国際性を確保しながら、各機関が担当する研究分野を中心に共同利用・共同研究することが求められています。本研究所が担当する物質構造科学は研究所ができるまでは存在しなかった名前の科学であり、本研究所は物質構造科学という新しい科学を形作っていくミッションを持っています。

物質構造科学は、宇宙を含む自然界に存在する、生命体を含む多種多様な物質、人工的に生み出される各種材料など、あらゆる "物質" の原子レベルでの "構造" や 電子"構造" を研究対象としています。このような物質構造を知ることで、人類が生きていくのに有用な物質を見つけていくことも可能になります。特に、高エネルギー加速器研究機構に属している物質構造科学研究所では研究手段に特徴があり、先端的な加速器から生み出される "量子ビーム" を使って物質構造の研究ができる研究環境を提供しています。

20世紀には、物質を科学するにもその成分の研究が中心でした。ところが、成分のそれぞれがわかっても物質の性質は説明できません。成分同士の相互作用のわずかな違いによって全く異なる性質になるケースもあるからです。21世紀近くになって現れた物質構造科学では、成分別ではなく、物質をあるがままに多方面から見ることを中心課題にしています。物質構造科学研究所は、放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子といった複数の量子ビームを組み合わせて研究することのできる、世界的にも恵まれた研究環境に頭脳を結集しつつ、物質構造科学を先導していきます。

平成30年5月

KEK 物質構造科学研究所
所長  小杉 信博