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KEK

月例研究報告 5月

月例研究報告
2017.06.09

1. 研究グループの活動状況

(1) 量子物性グループ

【 BL12高分解能チョッパー分光器HRC 】

 論文他

  1. Kazuki Iida, Ryoichi Kajimoto, Yusuke Mizuno, Kazuya Kamazawa, Yasuhiro Inamura, Akinori Hoshikawa, Yukihiko Yoshida, Takeshi Matsukawa, Toru Ishigaki, Soshi Ibuka, Tetsuya Yokoo, Shinichi Itoh, Yukihiko Kawamura, Akiko Nakao, and Takuro Katsufuji,
    "Time-of-flight elastic and inelastic neutron scattering studies on the localized 4d electron layered perovskite La5Mo4O16",
    J. Phys. Soc. Jpn. 86 (2017) 064803.
  2. S. Hayashida, M. Soda, S. Itoh, T. Yokoo, K. Ohgushi, D. Kawana, and T. Masuda,
    "Crystal field excitations on NdFe3(BO3)4 investigated by inelastic neutron scattering",
    J. Phys.: Conf. Series 746 (2016) 012059.
  3. H. Seto, S. Itoh, T. Yokoo, H. Endo, K. Nakajima, K. Shibata, R. Kajimoto, S. Ohira-Kawamura, M. Nakamura, H. Nakagawa, T. Yamada,
    "Inelastic and quasi-elastic neutron scattering spectrometers in J-PARC",
    Biochimica et Biophysica Acta 1861 (2017) 3651-3660.
  4. T. Haku, M. Soda, M. Sera, K. Kimura, J. Taylor, S. Itoh, T. Yokoo, Y. Matsumoto, D. Yu, R. A. Mole, T. Takeuchi, S. Nakatsuji, Y. Kono, T. Sakakibara, L.-J. Chang, T. Masuda,
    "Neutron Scattering Study in Breathing Pyrochlore Antiferromagnet Ba3Yb2Zn5O11",
    J. Phys.: Conf. Series 828 (2017) 012018.
  5. 伊藤晋一, 遠藤康夫, 横尾哲也, 井深壮史, Je-Geun Park, 金子良夫, 高橋圭, 十倉好紀, 永長直人, “金属強磁性体SrRuO3におけるワイルフェルミオン”, 日本中性子科学会誌 波紋 27 (2017) 67-70

 

 遍歴電子反強磁性体 γ-Fe0.7Mn0.3におけるスピン波励起の減衰

井深壮史1、伊藤晋一1、横尾哲也1、遠藤康夫1,2,3
1KEK, 2理研CEMS, 3東北大理

 鉄系高温超伝導体においては、磁気励起の超伝導への関与が指摘されている。鉄系超伝導体母物質のスピン波励起には、高エネルギー領域において異方的な減衰が見られる[1]が、その機構は十分理解されていない。このような背景から、遍歴電子系反強磁性体の典型的なスピン波励起への関心が高まっている。古くから研究されてきた遍歴電子系反強磁性体には金属クロムやその希釈合金があるが、スピン波速度が非常に大きい(> 1000 meVÅ)[2]ため、減衰について議論するのは困難である。そこで、今回我々は別の遍歴電子系反強磁性体γ-Fe0.7Mn0.3に注目し、J-PARC・MLFのBL12に設置されている高分解能チョッパー分光器(HRC) [3]を用いて、その高エネルギー領域(< 100 meV)のスピン波励起を調べた。
 磁気散乱は、高いQ領域では磁気形状因子の影響を受けて弱くなるため、スピン波励起は低いQ領域で観測されることが望ましい。HRCでは低散乱角側に検出器が設置されていることから、低いQ領域の観測が可能である。さらにHRCでは、高い入射エネルギーを用いた高いQ分解能での測定が可能であり、高エネルギー磁気励起の観測に最適である
。  図1は、T = 14 Kにおけるγ-Fe0.7Mn0.3のスピン波励起の分散関係を示したものである。40 meV以上ではスピン波励起は反強磁性スピン波の分散関係ħω2 = c2q2 + ⊿2から逸脱し、直線的な分散関係を示すことがわかる。また、ここには示さないが40-60 meV以上では、スピン波励起の減衰因子の急激な上昇ならびに、磁気散乱強度の減少が観測された。これらの興味深い一連の結果は、スピン波励起が40 meV付近で粒子空孔励起の連続帯領域に入ったことを示している可能性があり、今後の理論的な研究が期待される。
 本研究成果は、Phys. Rev. Bに掲載受理された[4]。 HRCでの中性子散乱実験は、S型課題(2014S01, 2015S01)により実施された。

[1] 例えば、S. O. Diallo et al., Phys. Rev. Lett. 102, 187206 (2009).
[2] J. Als-Nielsen et al., J. Appl. Phys. 42, 1666 (1971).
[3] S. Itoh, et al., Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. A 631, 90 (2011).
[4] S. Ibuka, S. Itoh, T. Yokoo, and Y. Endoh, Phys. Rev. B, in press. (arXiv:1612.02515)

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図1. T = 14 Kにおけるγ-Fe0.7Mn0.3のスピン波励起の分散関係。

 

【 BL23偏極中性子散乱装置POLANO 】

 装置整備・開発等

 POLANOでは真空ポンプのメンテナンスとそれに伴うPLCの改造、また冷却水流量計の不具合などの工事をおこなった。POLANOで導入している大型真空散乱槽は、MLFの他のビームラインで導入している真空槽と同様に、1)空気による散乱を抑制し、2)冷凍機など試料環境機器のための断熱真空が主目的である。したがって、20m3程度を比較的早い時間で、10-4Pa以下まで真空引きする必要がある。我々は、メカニカルブースターポンプ+ルーツポンプによりCrossover Pressure(15Pa)までの掃引をおこない、その後クライオポンプにより10-4Paを達成する。POLANOでは真空槽真空試験を始め、3×10-4Paの真空度を確認した。現在、gas desorption rateを知るために、build upによるガス放出を測定している。

 

 学会発表

 International Collaboration on Advanced Neutron Sources (ICANS XXII)
 (Oxford, UK) 2017年3月27-31日

  1. Imminent Launch of POLANO
    T. Yokoo, S. Itoh, M. Fujita, Y. Ikeda, N. Kaneko, M. Ohkawara
  2. The Neutron Spectrometers in J-PARC
    R. Kajimoto, T. Yokoo, M. Nakamura, K. Shibata, Y. Kawakita, M. Matsuura, H. Endo, H. Seto, S. Itoh, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura
  3. Proton Filter for Sub-eV Neutron Spectroscopy on POLANO
    K. Taketani, S. Itoh, T. Otomo, T. Yokoo, N. Kaneko

 

(2) ソフトマターグループ

【 BL16ソフト界面解析装置SOFIA 】

 受賞

 以下の論文が”Highlights of 2016 in Measurement Science and Technology”として選出された。

 S. Morita, J. Guo, N. L. Yamada, N. Torikai, S. Takeda, M. Furusaka, and Y. Yamagata,
 "Profile measurement of a bent neutron mirror using an ultrahigh precision non-contact measurement system with an auto focus laser probe",
 Meas. Sci. Technol. 27, 074009 (2016).

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