ミュオン科学研究系活動報告2015(4~5月)

2015年05月12日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. Dライン

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図1:低電流モード主回路ブロック図(最終) [拡大図(45KB)

 セプタム電源火災以来、ミュオン再生タスクを立ち上げる一方、セプタム電源復旧に向けて回路の安全性について審議会:高柳(加速器RCS電源担当者)入江(加速器、ミュオン技術協力員)、相澤、田中、久保(MLF技術S)、並びにミュオンスタッフで構成される「セプタム電源安全審査会」が、他のディビジョン、セクションの方々にも依頼して立ち上げられた。これまで、6回(3/20、4/6、4/9、4/13、4/17、4/22)の審査が行われ、低電流モードを組み込む回路の安全性、機能性について協議され、切り替えスイッチおよびインタロック等、以下の見直しを行い、概ね合意が得られた(図1)。
・ 通常モード(3φ400V)と低電流モード(3φ200V)を切り替え式にして排他的にする。
・ 低電流用トランス2次側にヒューズを入れる(ハードワイヤリングで主ブレーカ断)。
・ トランスのサーマルによって主ブレーカを開放する(ハードワイヤリングで主ブレーカ断)。
 低電流モードを追加する安全対策はブレーカ、安全回路およびインタロックの変更を伴うため、部品納期および安全の観点から低電流モードの組み込み調整は夏のシャットダウンに実施することとし、今回はユーザー利用を考慮して現状復旧を優先させるようにセプタム電源安全審査会(4月17日)にて工程が以下のように修正された(表1)。
・通常モードの復旧→ 工場検査4月27日~29日、搬入:5月7日、実負荷試験:電気保安審査通過後(5月下旬~)
・低電流モードの組み込み→夏のシャットダウン(7月~9月)
 検査要領書に沿った立会い検査(4月27日~29日)には高柳、入江、久保、河村、幸田、髭本、小林、坂田、目黒、藤森が立会い、安全に関する項目を重点に複数の目による確認が行われた。改善項目としてDCCT芯棒(水冷)への温度対策の不備が指摘され、その場で温度センサー4個(動作確認済み)が追加された。

 

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図2:工場立会い検査(IDX町谷工場) [拡大図(705KB)

 

表1:通常モード復旧工程 [拡大図(233KB)

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2. Uライン

 1月以来、セプタム電源事故の影響を受け、Uラインも停止していた。再開に向けて、電磁石等のビームラインコンポーネントの電源(16台)の安全試験を各製作メーカー立ち会いのもとに実施した。また、その他の小型の実験装置(約200台)も抜けがないように安全チェックを行い、問題のないことを確認した。さらに、ミュオンセクションリーダーを中心とする安全査察により指摘された事項(約50項目)について、対応を行った。これらを実施した結果、4/24にMLFディビジョン長より、Uラインの再開が許可された。ビームライン電磁石の電源の安全試験の過程で、一部の電磁石が地絡していることが判明した。本電磁石を取り出すには陽子ビームを止めなければならないこともあり、夏のシャットダウン期間に実施することにした。当面はこの電磁石を使用しないセットアップでビームコミッショニングを実施する。これらの変更に伴うミュオンビームの最適化のため、実験標的に止まったミュオンを観測できる検出器(図3)を新たに設置した。現在、この検出器の調整を行っている。ビームコミッショニング終了後には、超低速ミュオン発生実験を実施する予定である。

 

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図3:Uライン標的チャンバーと新たに設置したカウンター。 [拡大図(524KB)

 

3. Sライン

 Dラインセプタム電磁石電源の火災の後、Uライン、Dラインではそれぞれ安全再 点検を実施して運転再開までの手順を経てきた。Sラインについても安全再点検からビームコミッショニングに至るまでの工程案 およびマイルストーンを策定し、MLF会議において報告をおこなった。現在、5月下旬から3週間にわたり、Sライン電磁石電源(13台)の実負荷通電調 整を実施する計画である。
 ビームコミッショニングまでの工程の中で、最初に取り掛かる必要があるのは、 様々な装置のインフラとなるLAN(一般系、制御系、FL-Netの3系統)である。必要なケーブルのリストを各系統ごとに整理し、敷設作業の準備段階となるケー ブル切り出し、端末処理を行った。実負荷通電の工程調整とあわせて、作業実施の計画を実際の工程表に反映していく状況である。

 

 

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