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貞包浩一朗氏ら、日本物理学会 第17回論文賞受賞

物構研トピックス
2012年3月27日

3月26日、関西学院大学にて開かれた日本物理学会第67回年次大会にて、第17回論文賞表彰式が開催されました。日本物理学会論文賞は、独創的な論文の発表により、物理学の進歩に重要な貢献をした研究者に与えられる賞です。今回は17件15編の論文の中から、独創性、重要性、インパクトの点で特に優れた5編の論文が選ばれ、KEKからは物質構造科学研究所の貞包浩一朗博士研究員らが受賞しました。

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左から:瀬戸秀紀教授(KEK物構研)、貞包浩一朗博士研究員(KEK物構研)、遠藤仁研究員(日本原子力研究開発機構)

受賞対象となった論文は、貞包浩一朗、瀬戸秀紀、遠藤仁、柴山充弘著の "A Periodic Structure in a Mixture of D20/3-Methylpyridine/NaBPhinduced by Solvation Effect" J. Phys. Soc. Jpn. , Vol.76, No.11, 113602 (2007) です。貞包氏らは、水と3メチルピリジン混合液に塩を加えた溶液が、温度によって透明から青、緑、黄色、赤と変化することを発見。その仕組みを中性子小角散乱実験により、溶液中で10nmから数100nmの周期構造が発生し、温度と共に変化していくためであることを解明しました。このような長周期構造が溶液中に発生していることは、液体の概念を覆す重要な物理的発見となりました。また、これまでこのような相分離する溶液に塩を加えると、界面ではイオンと各相との親和性の違いからクーロン相互作用が表れ、中性子の散乱強度で観測できると理論的に予測されていましたが、実験で確かめたのはこれが初めての例です。実験手法を確立し、示したことはソフトマター物理、統計物理の分野に大きなインパクトを与えました。


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