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第3回 J-PARC/MUSE成果報告会を開催

物構研トピックス
2012年6月 1日

5月30日、東海キャンパスにてJ-PARC/MUSE成果報告会が開催されました。MUSE (MUon Science Establishment)は、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にあるミュオン科学研究施設で、2008年より共同利用が開始されています。今回は2011年度に実施された課題の報告会ですが、震災の影響によりJ-PARCでの実験ができなかった一部の、海外施設で振替実験された成果も含め、13件の発表がありました。

開会にあたって、三宅康博KEK物構研教授より挨拶があり、2011年度の振り返りとして震災の影響の報告、ならびに2012年2月から再稼働し始めた汎用ミュオンビームライン(Dライン)の進展が紹介されました。また、今後の施設整備計画、加速器の運転計画について説明がありました。特に、MUSEでは今年度中の完成を目指して建設が進められている超低速ミュオン用ビームライン(Uライン)、加速器トンネル内の整備が計画されている低速ミュオン用ビームライン(Sライン)ならびに、高速ミュオンビームライン(Hライン)などの紹介がなされました。

正ミュオンのスピン(磁石の性質)を利用したミュオンスピン回転(μSR)測定法によるサイエンスでは、磁性体、超伝導体に関する発表がありました。また、対象物質によってはミュオンだけでなく中性子や陽電子(正電荷の電子)と相互利用し検証されるものもあり、マルチプローブ利用による研究の芽生えが感じられました。一方、負ミュオンの特性X線を利用した元素分析によるサイエンスでは、以前行われた天保小判の深さ方向の元素分析の更なる詳細な分析、化石を多く含む炭素質岩石や隕石などへの利用が検討され、利用分野が大きく広がりを見せています。

利用研究を進めるには、ビーム発生、装置側の開発も不可欠です。現在も世界最高強度のパルスミュオンを利用できますが、加速器の更なる強度増強に向け、検出器も感度を良くする必要があります。開発している新しい検出器は、既存のものより数倍から10倍程度の効率が見込まれます。これは実験精度、効率を大きく左右するため、ユーザーからも期待の声が聞かれました。

基礎科学だけでなく、考古学、地球惑星科学などへの利用、全固体二次電池などへの産業利用と、幅広い発表があり、また今後のビーム増強、超低速ミュオンビームラインなど、ますますミュオンサイエンスの発展を予期させる報告会となりました。

>>プログラム(ミュオン科学研究系MSLのページ)


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