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last update:05/06/30  
  プレス・リリース 〜 05-04 〜 For immediate release:2005年6月30日
 
 
Belle実験の最新の結果について
− 新しいタイプの素粒子反応を確認 −

 
高エネルギー加速器研究機構 
 
 
物質の根本的な構成要素であるクォークは現在3世代6種類が知られている。このうち、2番目に重いbクォークを大量に作り出し、素粒子の基本法則を解き明かすのがBファクトリー実験の目的である。KEKの電子・陽電子衝突型加速器(KEKB)を用いて実験を行なっている国際共同研究グループBelle(ベル)は、昨年までに、CP対称性の破れの発見と小林・益川理論の検証、新しい物理法則の手がかりの発見、新しい共鳴粒子の発見など、素粒子物理学上の重要な成果をあげてきた。その後KEKB加速器の性能(ルミノシティ)が設計値の約1.5倍(毎平方cm毎秒あたり1.5×10の34乗)、1日あたりの性能も約2倍に向上し、今年6月までに約3億9千万組のB中間子・反B中間子対のデータを蓄積、物理解析を行った。この結果、第3世代のbクォークが第1世代のdクォークに遷移する新しいタイプの素粒子反応を世界で初めて確認することに成功した。具体的には、このデータの中に、B中間子が2個のK中間子に崩壊する事象30例と、γ線を放出してρ(ロー)やω(オメガ)などの軽い中間子に壊れる事象35例を確認した。これらの崩壊は添付図1,2に示すように、bクォークからdクォークへの遷移によって引き起こされるものである。
 
このようなタイプの反応はこれまでの素粒子物理学の標準理論でも存在することが予言されている。小林・益川理論によれば、添付図3に示す「ペンギングラフ」によってbクォークからdクォークへの遷移を引き起こす反応があると予想されるが、遷移確率が極めて低い超稀崩壊であるために検証が困難で、これまで見付かっていなかった。
 
これまで理論上のものであった非常に稀な現象が実験的に測定できるようになったことによって、この現象を引き起こしているものが標準理論のペンギングラフだけなのか、あるいは別の未知の物理現象が関与しているか、などが次の研究対象となり、素粒子の理解に新しい道を開くことになると期待している。特に、ペンギングラフには超対称性などの新しい物理法則が関与している可能性が高いと考えられており、これを追求する新たな側面としても興味深い。また、もし新しい物理法則の寄与がないという結論になった場合は、この現象の測定によって小林・益川理論のまだ正確に測定されていないクォーク混合パラメーターであるVtd(ブイ・ティー・ディー:弱い相互作用でtクォークがdクォークと結合する度合い)を測定する方法が開けることになり、標準理論の完全な理解につながると期待される。
 
この結果は6月30日からウプサラ(スウェーデン)で開かれているレプトン・フォトン相互作用国際シンポジウムで発表された。
 
Belleグループは世界の56の大学と研究機関に属する約400名の研究者によって構成される国際共同研究グループである。

 
 
 【資   料】 参考資料(PDF 857KB)
【関連サイト】 Belleグループwebページ
【本件問合わせ先】 高エネルギー加速器研究機構
  素粒子原子核研究所 教授
   山 内 正 則(Belle実験共同代表)
    TEL:029-864-5352
  東京大学大学院理学系研究科 教授
   相 原 博 昭(Belle実験共同代表)
    TEL:03-5841-4125
  高エネルギー加速器研究機構
  広報室 主管
   森 田 洋 平
    TEL:029-879-6047
 

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図1 : B中間子は100万分の1程度の確率で2個のK中間子へ崩壊することが確認された。この崩壊は上のような過程を通して起こり、bクォークがdクォークへ遷移する現象の証拠と考えられる。
 

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図2 : 図1の例と同様、B中間子が光を放出してρ中間子に変化する現象が確認された。この崩壊も同じようにbクォークがdクォークに遷移することの証拠である。
 

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図3 : 素粒子の標準理論では、この図に示すようにbクォークが不確定性原理によって許される短い時間の間Wとトップクォークに化けることがあり、その結果、bクォークからdクォークへの遷移が起こると考えられている。このような現象を歴史的にペンギン過程と呼ぶことがある。
 
 
 

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