J-PARC
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       プレス・リリース 〜 08-13 〜 For immediate release:2008年07月08日
   
 
J-PARC物質・生命科学実験施設の実験課題の募集を開始
   
J-PARCセンター 
   
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡崎俊雄 以下「原子力機構」)及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木厚人 以下「高エネ機構」)の共同運営組織であるJ-PARCセンター(センター長 永宮正治)は、本日、物質・生命科学実験施設(MLF)における中性子及びミュオンの実験装置を利用する実験課題(平成20年度後期分)の募集を開始しました。これはJ-PARCとして最初の実験課題の募集となります。
  (詳細はhttp://j-parc.jp/にも掲載)
 
本件は、J-PARCセンターのホームページ(6月3日:上記URLに掲載)と
原子力機構週報(表の下参照)での予告内容を、
公募開始に伴い詳細にお伝えするものです。
 
●概 要
大強度陽子加速器施設(J-PARC)※1の物質・生命科学実験施設では、光速近くまで加速した陽子がターゲット原子と衝突して生み出されるパルス状の大強度中性子※2やミュオンビーム※3を利用した多様な実験を行えます。(今年度は、中性子実験装置4台とミュオン実験装置1台が利用できる予定)
 
中性子を利用した研究は、高温超伝導物質※4中の原子やスピンの動き(ダイナミクス)、物質の結晶構造回折、機械部品や工学材料等の内部ひずみ(応力)と構造の回折、中性子源性能評価に係る中性子測定技術開発などを、またミュオンを利用した研究は、物質のもつ微小な磁性、物質中の水素の状態測定などを行うことが可能です。このように中性子やミュオンを利用した研究では物質科学に係る基礎研究から産業利用に至る幅広い成果の創出が期待されています。
 
 
利用期間 平成20年12月15日〜平成21年2月28日(予定)の期間中、20日間程度
応募資格 国内外の大学、民間企業及び公的研究機関等に属する者
応募方法 J-PARC課題申請システムを利用した電子申請
募集期間 平成20年7月8日(火)〜8月31日(日)17時
課題審査 MLF施設利用委員会で審査
採択時期 10月下旬頃(予定)
連絡先 J-PARCセンター 業務ディビジョン 利用業務セクション ユーザーズオフィス
TEL:029-284-4856 FAX:029-282-5996 Mail:j_proposal@ml.j-parc.jp
 
※本件に関する内容は、以下原子力機構週報にも掲載
 1) http://www.jaea.go.jp/02/press2008/p08060601/index.html (6月6日付)
 2) http://www.jaea.go.jp/02/press2008/p08061301/index.html (一部修正:6月13日付)

 
 
  【関連サイト】 J-PARC webページ
日本原子力研究開発機構
     
  【本件に関する問い合わせ先】  
  J-PARCプロジェクトについて
 J-PARCセンター
  副センター長 大山 幸夫
    TEL:029-282-6809
報道担当
 独立行政法人 日本原子力研究開発機構
  広報部報道課長 西川 信一
    TEL:029-282-9421
  実験課題・技術的内容について
  中性子源セクション
   研究副主幹 高田 弘
    TEL:029-282-6423
 高エネルギー加速器研究機構
  広報室長 森田 洋平
    TEL:029-879-6047
 

 
 【平成20年度に利用できる実験装置の概要】
 
1 中性子実験装置
(1) BL-01:4次元空間中性子探査装置
装置の目的・概要
格子系およびスピン系の動的性質を運動量-エネルギーの4次元空間にわたって高効率かつ中分解能で観測することにより、高温超伝導物質のダイナミクスを調べ、超伝導機構の解明を目指す装置。
(2) BL-08:超高分解能粉末回折装置
装置の目的・概要
パルス中性子を用いて高分解能で物質の結晶構造を調べる装置。
(3) BL-10:中性子源特性試験装置
装置の目的・概要
中性子源性能評価に係る測定や測定技術の開発等、汎用的な利用が可能な装置。
(4) BL-19:工学材料回折装置(愛称:匠)
装置の目的・概要
機械部品やその他の工学材料等の内部ひずみ(応力)と構造を調べる装置
2 ミュオン実験装置
(1) D-01:D1実験装置
装置の目的・概要
スピン偏極した(一方向に揃えた)ミュオンを物質中に注入し、物質の様々な磁気的性質を調べる研究(ミュオンスピン回転/緩和/共鳴(μSR))、半導体、水素吸蔵物質など、不純物としての水素同位体が重要な役割を担っている系で、ミュオンあるいはミュオニウム(水素原子の陽子をミュオンで置き換えた原子)の電子構造や動的性質(拡散等)を明らかにする研究、電荷が負のミュオンを、物質を構成する原子に捕獲させ、そのときに放出される特徴的なX線を検出して原子核・ 化学・微量元素分析・考古学の研究を行う装置。
 
茨城県中性子ビーム実験装置(2台)の実験課題も募集が開始されます。
募集要項等の詳細は、http://www.sf21-ibaraki.jp/whatsnew/new_bl_kobo.html (茨城県HP)を参照して下さい。
 

 
 【用語解説】
 
※1 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
  日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設中の陽子加速器施設と実験施設の総称で、光速近くまで加速した高エネルギー陽子をターゲットに衝突させることにより生み出される大強度量子ビーム(中性子、パイ中間子、K中間子、ミュオン、ニュートリノなど)を基礎研究や産業利用に供する施設。
 
※2 パルス状の中性子
  中性子とは、陽子とともに原子核を構成する粒子(核子)のひとつ。水素の原子核である陽子とほぼ同じ質量を持ち、電気的には中性である。また、微小磁石としての性質(磁気能率)も持つ。物質内への透過力が高く、水素などの軽い原子や物質の磁気的性質(磁性)に対して敏感である等の特徴がある。物質・生命科学実験施設では、1秒間に25回、40ミリ秒の間隔で中性子を発生させ(パルス中性子)、これを物質の構造や物質中の原子やスピンの動き(ダイナミクス)の研究などに用いる。
 
※3 ミュオン
  ミュー粒子とも呼ばれる。電子と同じレプトンの一種で電荷とともに微小磁石としての性質(磁気能率)も持つが、質量は電子のおよそ200倍である。磁気能率を持つことや軽い陽子として振舞うことを利用し、物質の磁気的な性質や拡散現象の研究などに利用される。物質・生命科学実験施設では、1秒間に25回、40ミリ秒の間隔で間欠的にミュオン(パルスミュオン)を発生させる。
 
※4 高温超伝導物質
  超伝導現象とは、特定の物質が非常に低い温度まで冷やされた時にある特定の温度(「転移温度」という)以下で電気抵抗がゼロになり、電気が非常に流れやすくなる現象のことをいう。高温超伝導物質とは、液体窒素の沸点(零下196℃)より高い温度で超伝導性をもつ物質であり、銅の酸化物であるY-Ba-Cu-O系が代表的な物質である。なお、この高温超伝導の機構はまだ解明されておらず、全世界で理論と実験の両面で非常に関心が高い研究テーマである。
 

 
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