【背景】
NF-κBは無脊椎動物を含むすべての動物の細胞に存在し、炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を誘導する働きを担っています。NF-κBは通常、IκB(inhibitor of NF-κB)と呼ばれるタンパク質と複合体を形成した不活性な状態で細胞質の中に存在しています。細胞外からの刺激を受けて、IKK複合体と呼ばれるリン酸化酵素がIκBをリン酸化すると、IκBにポリユビキチン鎖が結合し、最終的にIκBは分解されます。その結果自由になったNF-κBは活性化して細胞質から核に入り込み、炎症反応などに必要なさまざまなDNAをmRNAにコピーする転写因子として働きます。(図1) そのためNF-κBの機能不全は、がんや免疫不全、炎症性疾患などの原因となることが知られています。