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第1回世界加速器会議、京都で開催

2010年6月9日

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IPAC'10名誉議長 黒川眞一KEK名誉教授(IPAC会場である国立京都国際会館にて)

2010年5月23日(日)から28日(金)の6日間にわたり、京都国立国際会館で、初めての開催となる「世界加速器会議(International Particle Accelerator Conference: IPAC'10)」が開催されました。この会議は、これまで北米、欧州、アジアの3地域で別々に開催されていた3つの加速会議を、ひとつの国際会議に統合した会議の第1回目。世界各国より加速器物理に関わる研究者が1300名近く参加しました。「IPAC'10が成功に終わったことにより、新しい国際会議のシリーズである、IPACシリーズが名実ともに確立したと思います」と、今回の会議で名誉議長を務めた黒川眞一KEK名誉教授は話します。「2013年に開催される上海のIPAC'13を始め、今後開かれるアジアにおけるIPACが1000名を超える参加者を持つ本格的な加速器国際会議となるという確信を持つことができました」(黒川氏)。

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IPAC'10の開会セッションへの参加者。1500人収容のメインホールがほぼ満員となった。

会議では、加速器科学や放射光科学、素粒子物理等に関する、最新の実験結果や各種プロジェクトの進捗状況、理論研究の現状など、96件の発表が行われました。それらに加えて、1600件を超える研究者や学生によるポスター発表や約90社からの企業展示も実施されました。最終日には、加速器科学分野の研究進展へ貢献した科学者を称える「ACFA/IPAC賞」の表彰式が行われ、欧州合同原子核研究機関(CERN)のSteve Myers、中国清華大学のJie Wei、ブルックヘブン国立研究所(BNL)のMei Baiの3氏が受賞しました。同じく最終日の午後には、放射線医学総合研究所(放医研)元所長の平尾泰男東京大学名誉教授と、2008年度ノーベル物理学賞受賞者である、益川敏英京都大学名誉教授を迎えて、「加速器の果たす役割ー基礎物理学からがん治療まで」と題した市民公開講座が実施されました。500名を越える参加者が、様々な側面からの加速器を紹介する講義に、熱心に耳を傾けていました。

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J-PARCの高周波4重極型リニアックを見学するIPAC'10の参加者ら

会議終了後の5月29日(土)には、施設見学会が実施されました。参加者は、京都大学やSPring-8(兵庫県西播磨)等のコースに分かれて、日本の加速器施設を見学しました。5月31日(月)には、KEKつくばキャンパスとJ-PARCを見学するコースも実施され、会議の開催地である京都からは地理的に遠いにも関わらず、24名が参加。参加者は、KEKではKEKB加速器や放射光施設、先端加速器試験施設を、J-PARCでは、ライナック、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設、物質・生命科学実験施設を丸一日かけて見学しました。

「多くの参加者を迎えて、大きな失敗もなく無事会議を終えることができて、ほっとしています」と、本会議の議長を務めた生出勝宣KEK加速器施設長。「特に、プログラム委員長の野田章京都大学教授や、開催地組織委員会委員長の白井敏之氏(放医研)およびメンバーの方々、JACoWチームの方々のご努力は本当に大変なものであったと思います。皆が本業の合間にこれだけの会議の準備・運営を、進んで引き受けてくださったことを、心から讃えたいと思います」と、会議を成功に導いた関係者を労いました。

次回のIPAC'11は、スペイン、サン・セバスチャンで2011年9月5~9日の日程で開催される予定です。

※JACoW:
Joint Accelerator Conference Website 略称。加速器科学関連会議のプロシーディング(発表内容)の管理を行うウェブサイト。 国際協力で運営されている。