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阿部仁氏、第27回井上研究奨励賞を受賞

2010年12月16日

12月14日、財団法人・井上科学振興財団より井上研究奨励賞が発表され、KEK物質構造科学研究所の阿部仁(あべ・ひとし)准教授が受賞しました。

井上研究奨励賞は理学・医学・薬学・工学・農学等の分野で優れた博士論文を提出した若手研究者に対し贈られるものです。

受賞対象となった研究題目は「深さ分解XMCDによる磁性薄膜の磁気異方性の研究」です。阿部さんは東京大学大学院理学系研究科在学中からKEK 放射光科学研究施設のBL-7AおよびBL-11Aを利用し、磁性薄膜の磁気情報に関する研究を続けてきました。磁性薄膜は、巨大磁気抵抗効果(GMR)という特性を利用して大容量ハードディスクの読み取りヘッダなどに応用されている磁気記録素子の材料です。


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膜厚・表面の変化による磁気異方性変化の模式図


磁気異方性は、磁性体がどの方向に磁化されやすいかという性質で、磁気記録素子に高密度に記録を行なう際には重要な要素です。磁性薄膜では、膜厚や表面の分子吸着などによって磁気異方性が大きく変わることが知られていますが、その起源については詳しく分かっていませんでした。阿部さんは、深さ方向の情報を知ることのできる深さ分解XMCD(X線磁気円二色性)法を用いて、ナノスケールの厚みの磁性薄膜において、磁気異方性が大きく変わるしくみを解明しました。この研究成果は、より高密度で安定した磁気記録素子を開発するための貴重な情報となります。

贈呈式は2011年2月に行われる予定です。