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強い電磁場での物質や真空を探る KEKで研究会開催

2010年12月1日

11月24日から26日の3日間、KEKの小林ホールにて国際会議 「International Conference on Physics in Intense Fields(強磁場の物理に関する国際会議)」が開催されました。KEKの加速器研究施設と理論センターが中心となり、関西原子力研究所、総合研究大学院大学、東京大学、広島大学、独ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMU)が共同で開催したこの会議は、レーザー物理学と素粒子原子核物理学の融合を目指し、超高強度レーザーで実現される強い電磁場のもとでの物質、さらには真空そのものの振る舞いについての研究推進を目的に開催されたもの。100名を超す参加者があり、37の講演と14件のポスター発表が行われました。海外からも米国、英国、イスラエル、オーストリア、オーストラリア、中国、ドイツ、フランス、ロシアから多数の研究者が参加し、レーザープラズマ物理、素粒子原子核物理、宇宙物理、物性物理など多岐にわたる研究分野からのこの分野への大きな期待が示されました。


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会議の初日は髙﨑史彦KEK理事の挨拶に続き、Gérard Mourou氏による「レーザーをつかった高エネルギー物理」に関する総合講演がありました。レーザーの強度は1990年代に飛躍的に増大しましたが、これはMourou氏が開発した「チャープパルス増幅法(Chirped Pulse Amplification:CPA)」によるものです。同日はさらに、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のAxel Linder氏による「レーザーによるアキシオン探索」や、KEKの横谷馨氏による「ビーム相互作用における強い場の効果について」の講演も行われました。2日目には、米コネチカット大学のGerald V. Dunne氏による「高強度場の物理現象」に関するチュートリアル講演が行われ、 最終日にLMUの田島俊樹氏がレーザー物理と素粒子原子核物理の融合を目指した将来像を提示して、会議を締めくくりました。

この会議ではレーザーでの高強度場現象だけでなく、それに類似した現象を、素粒子原子核物理学や物性物理学、宇宙物理学の視点からも探求。重イオン衝突における高強度場現象、「マグネター」とよばれる高強度磁場をもつ星の物理、さらには通常の物質での絶縁破壊などの多種多様なテーマが取り上げられました。これらは一見異質のテーマですが、電磁場が強い場合におこる現象の記述に際して見られる普遍的な性質を扱っているもので、各テーマで活発な議論が交わされました。Mourou氏は「この会議は将来、高強度場の物理の重要な転換点とみなされることになるでしょう」と語り、多くの参加者もこれに同意していました。この会議は、異なる分野の研究者が、お互いに刺激し合いながら新しい研究分野の構築する基盤となるものです。

発表資料等、詳しくは会議ホームページをご覧下さい。
http://atfweb.kek.jp/pif2010/