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「七夕サイエンスカフェ~宇宙のはじまりに想いを馳せてみませんか?~」開催

2011年7月20日

7月8日(金)つくばエキスポセンターレストラン滝において「七夕サイエンスカフェ~宇宙のはじまりに想いを馳せてみませんか?~」が開催されました。この七夕サイエンスカフェは、日本天文学会が2009年から毎年実施している「全国同時七夕講演会」の企画の一環として、高エネルギー加速器研究機構主催で行ったものです。実施日が平日の夕方であったにも関わらず、会場は30名の参加者でいっぱいになりました。

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羽澄教授のトーク

サイエンスカフェでは、KEKと宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究者による2件のトークが行われました。まず、羽澄昌史教授が「宇宙最古の光からビッグバン以前を探る!」と題したトークで、南米チリのアタカマ高地で行われているQUIET実験(※)について写真を交えて紹介。宇宙初期のインフレーションや宇宙背景放射(※)について、さらにこの実験で今後目指す方向性について説明しました。羽澄氏は、トークの冒頭で参加者から質問を募りました。サイエンスカフェと言うざっくばらんな雰囲気のおかげか、参加者からは「宇宙の大きさはどれくらいなのですか?」「宇宙マイクロ波背景放射は減衰しないのですか?」など、多岐にわたる数多くの質問が寄せられ、羽澄氏はトークの後半でこれらの質問に丁寧に回答しました。

2件目は「小さなロケットが宇宙の暗黒時代に挑む!」とのタイトルで、松浦周二JAXA助教によるトークが行われました。松浦氏は様々な波長の光で行われている宇宙観測について説明しながら、赤外線では可視光とは異なった宇宙の姿を見ることができることを解説しました。また、宇宙誕生後最初に出来た天体を探るため、ロケットを用い行っているCIBER実験(※)の説明を、研究における苦労話や実験データの紹介を交えて行いました。ロケットの打ち上げ風景や動画など貴重な映像の数々が紹介されました。

サイエンスカフェ終了後も、多くの参加者が積極的に質問され、研究者と参加者とが飲み物を片手に議論を行うなど、サイエンスカフェは盛況のうち終了しました。

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松浦助教のトーク

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サイエンスカフェ終了後も沢山の質問が出ました

〈補足説明〉

※ QUIET実験(Q/U Imaging ExperimenTの略)
南米チリのアタカマ高地においてCMB偏光測定器を搭載した望遠鏡を使って、インフレーション宇宙論の証拠を探る実験。2008年よりデータ取得が開始された新しい実験である。観測装置の感度精度ともに世界トップレベルを誇り、世界5ヶ国14研究機関の約50名の研究者によって組織される実験である。メンバーのうち、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の職員は6名含まれ中心的な役割を担っている。
※ 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)
宇宙のあらゆる方向から一様に降り注ぐ電磁波のこと。1964年に米国のペンジアスとウィルソンによって偶然発見された。ビッグバンから38万年後、宇宙が冷えるに従い原子が形成され光が真っ直ぐ進むようになった状態(宇宙の晴れ上がり)の時に生じた宇宙最古の光であり、ビッグバンが起きたという有力な証拠である。
※CIBER実験 (Cosmic Infrared Background ExpeRimentの略)
アメリカ合衆国のホワイトサンズ実験場において、CIB(宇宙赤外線背景放射)測定器を搭載した小型ロケットを用い宇宙誕生後初期に形成された天体を観測する実験。宇宙の晴れ上がり後のダークエイジ(暗黒時代)において、宇宙の僅かな密度のゆらぎから天体が形成されたという証拠を探ることが出来る。日米の約10名の研究者により組織される独自性を持った実験である。