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ATF、直線加速器部分にビームが通ったことを確認

2011年5月30日

KEKの先端加速器試験施設(Accelerator Test Facility: ATF)では去る3月11日(金)の震災発生以降、精力的に復旧作業が続けられて来ましたが、5月26日(木)夜間に直線加速器部分にビームを通す試験を行い、その下流部分までビームが通ったことが確認されました。

ATFは、国際リニアコライダー(ILC)の実現に向けた試験加速器で、次世代加速器に必要とされる「極小」で「平行度の高い」ビームの生成を目指した研究開発が進められています。

加速器で加速される「ビーム」は非常に薄いリボンのような形をしています。ビームのサイズを小さくすれば、電子や陽電子の密度が高くなり、衝突の頻度が上がります。次世代加速器に要求されるビームのサイズは非常に小さく、衝突点付近で高さ5ナノメートル(ナノメートル=100万分の1mm)、幅300ナノメートルのレベルになっています。「平行度の高い」ビームとは、ビームの進行方向が揃っているために、ビームが遠くへ行ってもほとんど広がらないことを意味しています。ATFでは、これまで生成されたビームより約100倍平行度の高いビームをつくることができ、この種の加速器が世界ではATF一台のみであることから、世界中の研究者がKEKに来訪しATFで研究を行っています。

ATFは、直線加速器、ビーム・トランスポートライン、ダンピングリングから構成されており、今回の試験では直線加速器部分の最下流までビームが通ったことが確認されたものです。今後は、ビーム・トランスポートラインの電磁石群の設置精度(位置決め精度、アライメント)を調整し、ダンピングリングまでビームを通す試験を行う予定です。