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故・三沢正勝特任教授、日本中性子科学会功績賞を受賞

2011年1月13日

12月9日から11日まで行われた日本中性子科学会において、故・三沢正勝(みさわ・まさかつ)特任教授が功績賞を受賞されました。この賞は日本中性子科学会員で、広く国内の中性子科学の発展に寄与し、特に顕著な功績のあった者に対して授与されるものです。

三沢先生は、パルス中性子を用いた液体・非晶体用全散乱測定装置、および解析システムの開発者であるとともに、それを応用した液体・非晶体の構造研究の世界的なパイオニアでありました。1970年初頭東北大学にて、世界に先駆けて開発された液体・非晶体の構造測定用の全散乱測定装置とそのデータ解析技術は、KEKで開発・設置された全散乱測定装置HIT(1981年)およびHIT-Ⅱ(1990年)の礎となりました。そしてこれらの経験から現在、J-PARCの物質・生命科学研究施設(MLF)にて運用されている高強度全散乱装置(NOVA)の開発・設計・製作にも指導的立場で関与されました。


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全散乱測定装置HIT(1981年)

陽子加速器を用いたパルス中性子源に設置された。

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高強度全散乱装置NOVA(2009年)

J-PARCにて現在運用中。最隣接原子間距離からナノメートル程度の構造変化の観測が可能で、世界最高レベルの測定効率をもつ。


これらの開発装置を活用して展開させた、液体やガラス物質分野の構造学的研究では、多くの多原子分子からなる分子性液体の構造を解明し、構造学的研究を通じて気液臨界現象と実効的充填率との一般関係を解明されました。また近年では、生命科学の基礎的理解のために必要な、アルコール水溶液のメゾスケール構造を世界で初めて可視化することにも成功しています。

このように、装置開発のみならず材料・物質研究者としても中性子科学を切り拓き、発展させてきたことが認められ、功績賞受賞となりました。この間、三沢先生に接してきた多くの学生や若手研究者が、先生を模範とし、尊敬し集まってきたことは、次世代の研究者育成における大きな貢献を物語っています。