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黒川眞一名誉教授、ロルフ・ヴィデレー賞を受賞

2011年5月20日

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黒川眞一KEK名誉教授が、ヨーロッパ物理学会加速器部会のロルフ・ヴィデレー賞を受賞しました。ロルフ・ヴィデレー(1902-1996)は、ノルウェー出身の加速器物理学者です。現在の加速器に多く用いられる交流型加速器を考案。また、ベータトロン、シンクロトロン加速器における強収束の原理や衝突型加速器などを考案し、加速器の発展に大きく貢献しました。このヴィデレー氏の名前を冠したヴィデレー賞は、ヨーロッパで世界加速器会議(IPAC)が開かれる年に、加速器分野において顕著な業績を上げた個人に贈られる賞です。

黒川氏は、KEKの陽子シンクロトロンのビームライン製作の中心的な役割を果たしたほか、TRISTAN(トリスタン)計画では加速器制御を担当しました。また、KEKB加速器の建設では、責任者である主幹を努めました。KEKB加速器では、運転初期に電子雲効果の影響でルミノシティが思うように上がりませんでした。黒川氏はこの現象に対応するために、ソレノイドコイルを導入することを決断。その後のルミノシティの世界記録の樹立に大きく貢献しました。

また、2000年には、10年間継続した中国との拠点大学方式共同研究をスタートさせ、北京の高能物理学研究所や上海放射光施設などとの共同研究を進めました。このプロジェクトの後半には韓国やインドを交え、日本とアジアとの学術交流に大きく貢献しました。更に黒川氏は、それまで米・欧・アジアの三地域で独立に開催されていた3つの地域加速器国際会議、PAC、EPAC、APACをひとつの国際会議IPACとしてまとめることに尽力し、初の合同会議となるIPAC’10が2010年に京都で開催されました。

ヨーロッパ物理学会は、黒川氏が長期にわたって発揮した学術及び国際協力におけるリーダーシップを高く評価し、黒川氏にロルフ・ヴィデレー賞を授与することを決定しました。授賞式は、9月4日からスペインのサン・セバスチャンで開かれるIPAC’11期間中に執り行われます。