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   image 10年前のホームページ    2002.09.26
 
〜 KEKが発した日本初 〜
 
ご覧頂いたのは10年前に日本で初めて世界のWebへリンクしたKEK発のホームページです。英文字で記されたとても簡単なものでした。記事や写真と図が日本語で読め、リンクをたどればページを繰ることも出来る現在のKEKのホームページからは想像もできません。今日は1992年9月30日に日本初のホームページを世界に発信したKEKの活動が、高エネルギー物理学の歴史と深く関わっていることを紹介しましょう。
 

Webを生んだCERN

これまでに何度も加速器実験で紹介してきたジュネーブにあるヨーロッパ合同原子核研究所CERNのホームページには右上すみに「....where the Web was born」と記されています。これは「Webが誕生した場所」という意味です。この言葉は、高エネルギー加速器実験と情報をネットワークで共有するためのWebは切っても切れない密接な関係で発展したことを物語っています。CERNのAtlas実験やKEKのBelle実験でお話したように、高エネルギー物理学実験では、世界各地から数百人、時には千人を超える研究者が集まって、一つの巨大な検出器を建設し、研究を行なってきました。このため、この分野は早くから計算機やネットワークを積極的に実験に取り入れ、これらの技術と密接に結びついた発展をしてきました。
 
現在では、巨大な実験グループのデータ解析や研究者の間での研究連絡などのために、インターネットはなくてはならない存在になっています。このインターネットが発展し始めたのは、リンクをたどり、自由にネットワーク上の書類を見ることが出来る仕掛けがCERNで生まれ、いわゆるWorld Wide Web(WWW)が誕生してからです。その後、リンクで結ばれた情報ページを閲覧するソフトとしてMosaicやNetscapeなどの高機能で使いやすいブラウザと呼ばれるソフトが登場すると、インターネットはさらに爆発的に成長して現在の世界的情報通信基盤となったのです。
 
 
ジュネーブ(CERN)からつくば(KEK)へ

KEKから日本初のホームページを発信したのはKEK計算科学センターの森田洋平博士です。森田さんは、1992年9月にCERNに立ち寄り、Webの生みの親Tim Berners-Lee博士と昼食を共にしました。話がWWWに及ぶと「情報はネットワーク上でみんなと共有してはじめて価値が生まれる。KEKもぜひWWWサーバーを立ち上げてほしい」と情熱に溢れた眼差しでBerners-Lee博士は森田さんを説得しました。森田さんは昼食後、早速CERNの端末室へ行き、ネットワーク経由でKEKにログインし、はじめてHTMLファイルを作り、サーバー上に置きました。このアドレスをBerners-Lee博士に電子メールで送り、CERNのリンク集のページにKEKを加えてもらいました。
 
メモによればそれは1992年9月30日、当時、CERNのTim Berners-Lee博士のページに登録されたWWWサーバーの数は世界中で10数台ぐらいだったと言うことです。こうして日本初のホームページがつくばから発信されたのです。インターネットの日本におけるその後の目覚ましい発展を考えると10年前のホームページからは想像も出来ません。最後に現在の高エネルギー物理学の発展を支えている日本の計算機システムの歴史をまとめておきましょう。
 
 
高エネルギー物理学を支えるネットワーク

高エネルギー物理学の実験にネットワーク計算機システムが不可欠なことはWebの誕生の際にお話しました。現在、日本では高エネルギー実験を進める大学や研究所間の高速データ転送を実現するHEPnet-J(高エネルギーネットワーク日本)が、国立情報学研究所のネットワークSuper-SINETをもとに構築されています。同時に世界中の高エネルギー物理学の主な研究所ともそれぞれ専用のネットワークで接続されています。
 
HEPnet-Jの歴史はKEKにある計算機と、筑波大学や東京大学など全国7大学の素粒子実験室にある計算機がNTTのデジタルパケット交換網によって接続された1984年に始まります。それまでの高エネルギー物理実験では実験した研究所にある計算機で実験データを解析したり、実験データやグループで開発したデータ解析用プログラムをパンチカードや磁気テープに記録しそれぞれの大学に持ち帰ったりしていました。パケット網の出現で研究者は研究所に出張しなくても、自分の大学の研究室から直接相手の計算機にログインしたり、データ解析用プログラムファイルを転送したりすることが出来るようになりました。
 
パケット網はその後、専用回線を用いた独自のネットワークに置き換えられ、国外はアメリカのフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)やジュネーブのCERN、ドイツのDESY研究所などと研究連絡に用いられるようになりました。この専用回線網は世界のネットワークとしてHEPnetと呼ばれています。90年代になるとインターネットの標準的な通信の割合が徐々に大きくなり、今では他の分野のインターネットとも相互に乗り入れする世界的な規模のインターネットの一部を構成しています。さらに詳しく知りたい方は日本のHEPnetの簡単な歴史をまとめた表をご覧ください。
 
今日はKEKのホームページの10歳の誕生日に合わせて高エネルギー物理学とインターネットとの深い関わりについてお話しました。歴史あるKEKのホームページ、これからもご愛読ください。
 
 

→関連記事
    1)計算機システムの歴史
    2)日本最初のホームページ

 
 
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[写真1]
空から見たCERN研究所(スイス)
周りはぶどう畑で向こうにジュラ山脈が見える
拡大図(57KB)
(写真提供:CERN研究所
 
 
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[写真2]
KEK計算科学センター  森田洋平理学博士
拡大図(36KB)
 
 
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[図1]
拡大図(56KB)
 
 
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[図2]
KEKの計算機ネットワークは、機構内全域に散らばる4500台以上の機器を互いに接続している。また、国内外の高エネルギー実験を進める大学や研究所との高速なデータ転送を実現するために、それぞれ専用のネットワークで接続されている。
拡大図(36KB)
 
 
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[図3]
拡大図(36KB)
 
 
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proffice@kek.jp
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