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   image 宇宙線を見る    2003.10.9
 
〜 スパークチェンバーはなぜ動く 〜
 
宇宙空間を飛び交い、地球に降り注いでくる高エネルギーの粒子のことを宇宙線と呼びます。私たちの回りにはいつも宇宙線が降り注いでいて、1秒間に200回以上も私たちの身体を突き抜けています。スパークチェンバーという装置を使うと、宇宙線の飛跡を目で見ることができるようになります。今日は、宇宙線とスパークチェンバーについてお話ししましょう。

宇宙線とは

宇宙では、超新星の爆発や太陽表面の爆発などで発生した高エネルギーの粒子がいつも飛び交っています。これは一次宇宙線と呼ばれていて、約90%が陽子、約8%がアルファ粒子(ヘリウムの原子核)、その他の粒子が約1%含まれます。これらの粒子が地球の大気圏に突入すると、高度数十kmで空気中の窒素や酸素などの原子核と衝突し、核反応を起こして放射性同位元素を生成させたり中性子や陽子をはじき飛ばしたり、パイ中間子などの粒子を発生させたりします。この発生の様子は大気シャワー現象と呼ばれ、一次宇宙線の衝突で発生した粒子を二次宇宙線と呼びます(図1)。

宇宙線を発見したのはオーストリアの物理学者F. S. ヘスです。ヘスは1912年、気球に乗って、高度と放射線の強さの関係を測定し、上空に行くと放射線強度が増加することから、地球の外から強力な放射線が入射してきているに違いないと考えました。

その後の気球やロケット、人工衛星の実験、原子核乾板の発達などによって宇宙線の種類やエネルギーなどが精密に測定されるようになりました。加速器で高いエネルギーの粒子を人工的に発生させることができるようになるまでは、宇宙線の観測は素粒子の振る舞いを調べるための大事な実験手段でした。現在でも超高エネルギーのガンマ線の観測など、宇宙線は人類がまだ到達することのできない高いエネルギーの現象を調べるのに重要な役割を果たしています。

粒子の軌跡を探す

大気の上層部でシャワーとなった二次宇宙線のうち、地表まで降ってくるのは大部分がミュー粒子です。他にニュートリノや電子なども含まれています。ミュー粒子や電子のように電気を帯びた粒子が、物質の中を通ると、周りの分子や原子に含まれる電子をはじき飛ばしてイオン化という現象を起こします。

ヘリウムガスの中に電気を帯びた粒子が突入してくると、粒子の軌跡の周りにあるヘリウム原子の電子がはじき飛ばされます。はじき飛ばされた電子はプラスの電圧がかかった電極に引き寄せられて加速されていきます。この加速された電子がさらに他のヘリウム原子の電子をはじき飛ばしてねずみ算式にたくさんの電子を作り出す「電子のなだれ現象」が起きて放電(スパーク)が発生します(図2)。

スパークチェンバーは、この放電を見ることで、荷電粒子の飛来する方向を見つけることができるようにした「飛跡検出器」のひとつです。ヘリウムガスの中に電極を何層にも重ねることで、宇宙線が通過した様子を立体的に観察することができます(図4)。

電極に高電圧をかけたままの状態では、いったん放電が始まると止まらなくなってしまいます。そこでスパークチェンバーの上下に設置されたシンチレーションカウンタという検出器を荷電粒子が通過した時だけ電極に高電圧が印加されるように電気回路の工夫をします(図3)。

スパークチェンバーは日本で生まれました。大阪大学の福井崇時、宮本重徳の両氏は、ホドスコープチェンバーの研究開発をすすめていました。ホドスコープチェンバーとは細長いガラス管の中にネオンガスを封入したものを積み重ね、宇宙線の通過直後にガラス管に高電圧を加え、宇宙線が通過したガラス管のみを放電させ、その状態を写真に撮るものです。

両氏は気体の圧力を1気圧まで上げさらに高電圧をかける時間を短くすると、気体全体が放電するのではなく種となるイオン近傍だけを放電状態にできることを発見しました。1958年のことです。

ガスを使った検出器の仲間たち

スパークチェンバーは、それまで宇宙線の飛跡を見るために使用されていた霧箱や泡箱に比べて取り扱いがとても簡単なため、以後、宇宙線の研究や加速器を使った実験に多く使われるようになりました。

ガスの中を通過した高エネルギー粒子がガスをイオン化する現象を使って放射線を測定する検出器には、スパークチェンバーの他に、ガイガーカウンターや比例計数管などがあります。

Belle検出器でも、電子と陽電子が衝突する点から発生するミュー粒子を、検出器の一番外側に置かれたミュー粒子検出器で測定していますが、ここでもスパークチェンバーの原理を利用しています。また、Belle検出器の中央飛跡検出器では、比例計数管の原理が応用されています。

 
 
※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→福井崇時教授の回顧録のページ
http://www.kcg.ac.jp/acm/a5042.html
→「暮らしの中の放射線」のページ
http://rcwww.kek.jp/kurasi/index.html
→キッズサイエンティスト:宇宙線
http://www.kek.jp/kids/class/cosmos/rays.html

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[図1]
宇宙から降ってくる高エネルギー粒子が大気圏の上層で大気中の原子核と衝突し、大気シャワー現象を起こす。
拡大図(48KB)
 
 
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[図2]
宇宙線の通過で生じた電子に高電圧をかけると、なだれ現象が生じて放電します。
拡大図(19KB)
 
 
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[図3]
スパークチェンバーの回路図
拡大図(19KB)
 
 
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[図4]
宇宙線がスパークチェンバーを通過した瞬間
拡大図(33KB)
 
 
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[図5]
スパークチェンバーで宇宙線をとらえた様子
AVIムービー(1.5MB)]

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