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研究現場を体験 2008.6.12 |
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〜 総研大の夏期実習 〜 |
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総合研究大学院大学については、これまでにも何度かお伝えしてきました。KEKには、総研大高エネルギー加速器科学研究科の加速器科学専攻、物質構造科学専攻、素粒子原子核専攻の3専攻が設置され、加速器等の施設を使った大学院教育が行われています。 総研大高エネルギー加速器科学研究科では、毎年夏のこの時期に、研究職を志す大学学部学生を主な対象に夏期実習を行っています。今年は、6月2日〜4日に開催され、全国の大学から97人が参加しました。 6月2日 午前 −始まりは放射線安全講習− KEKでの夏期実習は、まず放射線安全講習から始まります。加速器関連施設を使ったKEKならではのオープニングです。放射線管理区域での実習を安全に実施するための大切な講習ですので、受講者の皆さんも真剣です。講習を受けた後には試験があり、受講者は放射線業務従事者として認定されてから実習に参加します。 6月2日 午後 −実習ガイダンス、KEK・総研大紹介− 初日の午後はガイダンスが行われました。今回の実習の実行委員長である小林克己准教授から実習担当教員を代表して挨拶があり、続いて実習の趣旨と3日間のスケジュールが説明されました。 次に、総研大高エネルギー加速器科学研究科長の飯田厚夫教授が、KEKの研究施設及び研究活動を紹介し、最先端の加速器施設を用いて行われる同研究科の博士課程教育の特色を紹介しました。 その後、受講者はKEK内にある主要な施設を見学します。説明で聞かされた加速器や測定器などの実験装置はどのようなものなのか、百聞は一見に如かず、といったところです。「素粒子原子核研究」、「加速器」、「物質構造科学」、「低温技術」の興味によりコース分けされ、Belle測定器、先端加速器試験棟、放射光実験ホール、放射光光源加速器、超伝導低温工学センターなどを、各施設の研究者の説明を受けながら、全体でおよそ2時間半かけて見学しました。受講者の皆さんは、翌日から行われるテーマ別実習の現場となる巨大な装置や精密な機器を熱心に"下見"していました。 6月2日 夕方 −担当教員と懇親会− 施設見学後、受講者は選択した実習テーマ別に別れ、それぞれの担当教員から、翌日からのテーマ別実習について説明があり、夕方には、受講者と担当教員との懇親会が行われました。実習を行う側と受ける側の人間関係が作られていくことも実習の大切な要素です。受講者の志す研究を知り、担当教員の人柄に触れ、翌日からの実習に向けた関係作り、という風景が会場には見られました。 6月3日 終日〜6月4日 午前 −テーマに分かれて実習− 2日目と3日目の午前中は、テーマ別実習が行われます。今回は、素粒子原子核専攻で7テーマ、物質構造科学専攻で8テーマ、加速器科学専攻で9テーマの実習が実施されました。1つの実習テーマの受講者は平均4〜5名で、それぞれに密度の高い実習が期待できる内容となっています。 テーマ別実習の内、素粒子原子核研究所の宇野彰二准教授と5人の受講生の実習現場に少々お邪魔して様子を拝見してきました。 6月3日は、敷地の北東端にある筑波実験棟での作業でした。地下4階のBelle測定器が巨大にたたずむ傍らで、受講生たちは、組み立てた粒子検出器で放射線源からの粒子を捕える測定を行っていました。1つのモニターを囲みながら、機器のセットアップに皆、真剣です。「富士テストビームラインで、加速器からのビームを測定するんですよ。」とのことで、機器のセットアップ後には、道のり1.5km離れた富士実験棟に装置を移送設置をするのだそうです。(図1) 翌6月4日の朝、富士実験棟の地下3階に設置された富士テストビームラインを訪ねてみると、前日の受講生たちがテストビームラインのビーム軌道上で、検出器を囲んで作業をしていました。前日も加速器からのビームを測定したそうで、この日も、モニターを見ながら、「これですか?」「いや、宇宙線も降ってきているし、ノイズもあるから。」などの言葉を飛び交わしながら、取り組んでいました。(図2) 現場で作業の状況を説明してくれた受講生は、昨夏の“サマーチャレンジ”(学部学生を対象とした素粒子原子核サマースクール)にも参加したとのことでした。こうした実習に繰り返し参加することで、KEKで行われている研究のより奥深い部分を理解していただけると思います。 この1日半のテーマ別実習が、やはり受講生にとっては、最もエキサイティングな時間であるようです。各現場では、さまざまな表情が見られ、実習の充実振りが伺えました。(図3) 6月4日 午後 −締めは講義で− 3日目の午後は、素粒子原子核、物質構造科学、加速器科学、それぞれの分野の最先端の研究、あるいは研究を行う上で押さえておくべき基本についての講義が行われ、受講生は自身の興味に合わせて聴講します(図4、5)。研究現場の第一線で活躍する研究者の講義ですので、研究者を志す上での有用な情報が詰まっています。午前中までのテーマ別実習で疲れているであろう受講生の中にも、講義の要所々々で質問を投げかけるなど、少しでも多くのものを吸収しようという意欲が見られました。 講義が終わると、受講生が一堂に会して、小林委員長より今回の実習のまとめと、激励の言葉があり、今年の夏期実習は閉講しました。帰途に着く学生たちの中には、今回知り合った受講生仲間との親交が生まれた様子も伺えました。
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