for pulic for researcher English
news@kek
home news event library kids scientist site map search
>ホーム >ニュース >News@KEK >この記事
last update:09/04/30  

   image 素粒子を測るテクノロジー    2009.4.30
 
        〜 TIPP09:国際会議に400人が参加 〜
 
 
  「第1回素粒子物理の技術と測定器に関する国際会議(TIPP09)」と題した国際会議が2009年3月12日より17日まで、つくば国際会議場エポカルで開催されました。この会議は素粒子を検出するための測定器の技術について、大型装置を使った巨大科学の典型である素粒子物理実験を始めとする様々な先端分野における、素粒子検出の技術開発にその焦点を絞って世界中の研究者が議論を行う初めての国際会議です。

国際的な枠組みの下で

従来、素粒子物理学の分野では、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)が主導して行う二つの大きな国際会議がありました。一つはレプトン・フォトン相互作用国際シンポジウム(通称LEPTON-PHOTON)、もう一つは高エネルギー物理学国際会議(通称ICHEP)で、いずれもこの分野の理論と実験を通じて最も権威のある国際会議として知られています。今回、第1回の会合が開催されたTIPP09は、同じくIUPAPの国際的な枠組みの下で開催された初めての本格的な素粒子検出の技術開発のための会議です。

会場のエポカルは4層吹き抜けのアトリウムが中心に配置され、公園に面した側はガラス張り、道路側はサイズの違うガラスブロック、天井に空けられた巨大な楕円形のトップライトから室内の樹木に光が降り注ぐ、明るい空間が印象的です。そこにテクノロジーに関心の深い400人超える素粒子実験家(海外よりの参加者226人を含む)が集結しました(図1)。素粒子物理学の進展に伴って、ややもすると研究内容が細分化され、年間100以上の国際会議が開催されています。そんな中で、テクノロジーをキーワードにして、様々な科学テーマの研究者が一堂に集まれた事はとてもすばらしい事です。

ガマの口上から学生向けのレクチャーまで

会議開催の前夜は、世界各地からの長旅を癒すためのレセプションが行われました。ここでアトラクションとして披露されたのが、日本古来の大道芸、筑波山ガマの油売り口上と街角に幸せを呼ぶとされている南京玉すだれ。しかもガマの口上は初公開の英語版とあって、会場の外国人参加者も興味津々の様子でした(図2)。

会議は高崎史彦KEK素粒子原子核研究所長の開会の辞に続く素粒子物理関連のホットなプロジェクトに関する3つのプレナリー講演で幕を開け(図3)、午後からは5つの会場に分かれて、11のカテゴリーに分類されたパラレルセッションで、さらに突っ込んだ報告・議論が始まりました。その講演の総数はその後3日間で176に及びました。いずれの発表でも素粒子実験はもとより、宇宙観測、加速器機器、あるいは医療・生物・物質研究など素粒子以外の分野における応用などからも最新の成果が報告されました。これに加えて116の論文が展示されました(図4)。ここでは同時に、測定器技術と関連の深い国内外の企業17 社がその高い技術力を華やかな展示でアピールしました。

今回の国際会議の呼び物の一つが、世界から集まった著名な研究者による若手学生・研究者向けレクチャーコースです。KEKと併設されている総合研究大学院大学の主催として、入門用のやさしい講義をしていただきました。大勢の学生に混じって、日頃の不勉強を補いたいと考える「若くはみえない学生」の姿も目につきました。

日本色溢れる国際会議に

毎朝8時40分から始まる議論には緊張感がみなぎります。これを鎮めるのに企画されるのが夜の催し。ヨーロッパなどで開催される国際会議では荘厳な教会でのコンサートなどが定番ですが、ここつくばで参加者を魅了したのは、地元の伝統芸能、真壁白井座の人形浄瑠璃です。「女夫松菟玖波曙(めおとまつつくばのあけぼの)」と題された二本松の因縁話が外国人研究者たちにどう理解されたかはともかくとして、人形の比較的シンプルな仕掛けによって、驚くほど多様な表現を生み出す事には、一同驚くばかりでした(図5)。

大きな国際会議では、会議のプログラム、周辺の地図、レストランガイド、時刻表などの「コンファレンスキット」を収納できるバッグを配布する事がよくありますが、時として帰国の際かさ張ったりして邪魔者扱いされる事も・・・。そこで今回は日本古来のエコバッグ、折畳んで場所とらずのオリジナル風呂敷(図6)を、コンファレンスバッグとして配布したところ、好評を博しました。布切れ1枚で多様な包み方ができることに多くの参加者が驚いていました。

今後の展開の成否

6日間の会議は、最終日にBrian Foster氏(Oxford大)によってまとめられました(図7)。この会議は先に述べたようにIUPAPがホストとなる新しいシリーズの第1回ということもあり、今後の展開の成否を占うものと言われていましたが、「とても良いスタートを切れた」とのFoster氏の言葉に、開催のために張り切ってきた KEKのスタッフ一同も、なんとか胸をなで下ろす事ができました。

次回の会議(TIPP11)は、2011年に米国・シカゴ地区でフェルミ国立加速器研究所の主催で開催される予定となっています。



※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→TIPP09のwebページ
  http://tipp09.kek.jp/
→国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)のwebページ(英語)
  http://www.iupap.org/
→筑波山がまの油売り口上研究会のwebページ
  http://members.jcom.home.ne.jp/gamaken/

→関連記事
  ・02.07.25
    素粒子世界の時計(1) 〜ナノ(10億分の1)秒を計る〜
  ・02.08.01
    素粒子世界の時計(2) 〜ナノ(10億分の1)秒を計る〜
  ・06.04.20
    素粒子を見逃すな 〜測定器開発室の挑戦〜
  ・08.09.25
    超小型の放射線イメージセンサー
        〜絶縁技術で放射線検出器を作る〜

 
image
[図1]
つくば国際会議場エポカルで開催された「第1回素粒子物理の技術と測定器に関する国際会議(TIPP09)」には、世界各地から400人を超える研究者が参加した。
拡大図(124KB)
 
 
image
[図2]
会議開催前夜に開催されたアトラクションでは日本古来の大道芸である筑波山ガマの油売りの英語の口上と南京玉すだれが披露された。
拡大図(44KB)
 
 
image
[図3]
プレナリー(本会議)の講演の様子。素粒子実験、宇宙観測、加速器機器、医療・生物・物質研究など、11の分野から176の講演があった。
拡大図(58KB)
 
 
image
[図4]
会議と併設でポスターセッションも開催され、116本の論文が発表され、研究者の活発な議論が続いた 。
拡大図(69KB)
 
 
image
[図5]
会議参加者の相互交流を深める夜の催しでは茨城県地元の伝統芸能である真壁白井座の人形浄瑠璃「女夫松菟玖波曙(めおとまつつくばのあけぼの)」が上演された。
拡大図(55KB)
 
 
image
[図6]
会議資料を携帯するために参加者に配られた日本古来の「エコバッグ」であるオリジナル風呂敷も好評を博した。
拡大図(94KB)
 
 
image
[図7]
英国オックスフォード大学のブライアン・フォスター教授が第1回の会議のまとめを行い、「とても良いスタート」と評した。
拡大図(51KB)
 
 
 
 
 

copyright(c) 2009, HIGH ENERGY ACCELERATOR RESEARCH ORGANIZATION, KEK
〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1
proffice@kek.jpリンク・著作権お問合せ