放射化学/放射線化学
放射性同位元素とそこから出る放射線を研究対象とする化学の専門分野。放射性同位元素を含む化合物の反応や性質を調べ、分離精製などを行う。放射性同位元素として炭素を用いた年代測定を行うこと、放射性同位元素を印として化学反応における元素の移動を追跡するトレーサー、放射線を出すことによって特異な挙動を示す反跳原子の性質を調べることなども放射線化学の領域である。安定な元素に中性子やイオンを当ててつくった放射性同位元素の化学分析に加え、電子と陽電子が結合したポジトロニウム、正のミュー粒子と電子が結合したミューオニウムなど、一般に核化学と呼ばれる研究も行われる。放射線技術の応用として、物質の性質や化学反応への放射線の影響を調べ、醸造製品の熟成促進、野菜の鮮度保存、高分子合成などが開発されている。


分子軌道
分子の中で電子が運動する軌道。古典力学による描像は成立せず、分子軌道は、量子力学的に計算される波動関数によって表わされる。実際には、まず原子の中の電子の波動関数 (原子軌道) を計算し、分子を構成している原子について原子軌道の和をとることによって近似的に求められている。これをLCAO近似という。パウリの排他原理によると、一つの軌道には上下それぞれのスピンをもつ2個の電子しか存在できない。外側の一番エネルギーの高い軌道の電子は、化学反応に重要な役割を果たしていることが示されている。原子間結合を原子の手と手の結びつきとして考えるこの理論は、福井謙一のフロンティア電子理論として有名である。


化学結合
古典力学的描像によると、化学結合は2つの原子または原子団の間で電子を交換して電気的な結びつきを保つ。イオン結合とは、一方の原子の最外殻電子が他方の原子軌道に移動して、両者の正負の電荷が電気的引力によって結合することである。共有結合とは、双方の原子が一つずつの電子を出し合い、それらを対にして共有する結合様式である。さらに、一方の原子が出した2個の電子が、他方の原子軌道に入って結合する配位結合もある。水素結合や金属結合も化学結合の種類である。これらの結合状態の分類は相対的なものであり、正確な状態は量子力学に基づいて計算される波動関数を使ってはじめて表わすことができる。


60/フラーレン
60個の炭素原子が12個の五員環(炭素5原子からなる環)と10個の六員環を構成し、サッカーボール状の3次元中空分子となったもの。アメリカのバックミンスター・フラーが建設したドームの構造に似ているので、バッキーボールあるいはフラーレンとも呼ばれている。ダイヤモンドや黒鉛と同様・舎炭素の同素体で、直径は0.71nm である。1970年に大沢映二がその存在の可能性を理論的に予言し、1985年にクロトーとスモーリー(96年、カールとともに3人でノーベル化学賞受賞)らがヘリウム中でレーザー照射した黒鉛を質量分析器にかけて発見した。1990年、クレッチマーがC60をの量産方法を確立し、以後化学的性質の研究が進んだ。分子の中空部分にアルカリ金属を注入すると絶対温度18K以上でも超伝導性を保つことから、高温超伝導物質として注目された。イオンエンジンの推進剤や工業用ダイヤモンドの合成原料として期待されている。さらに、C60の誘導体がエイズウイルス(HIV)の酵素を阻害したり、ガン細胞の増殖を抑制する効果をもつという研究結果も報告されていて、C60の未知の物理的あるいは化学的性質に研究者の注目が集まっている。天然に存在することが興味の対象になり、地球上ではロシア産シュンガイト中に微量のフィルム状結晶として見つかった。今のところ、隕石からは未発見である。類似物質として、C70、C76、C78、C82などが存在する。理化学研究所において、ピーナッツの殻のような形をしたC120が合成された。さらに、ナノチューブと呼ばれる巨大な分子も見つかっている。


活性酸素
基底状態に対して、励起状態の酸素分子を指す用語。活性酸素はエネルギーの高い励起状態にあので、通常の酸素と比較して化学反応における役割が非常に大きくなる。通常の酸素分子は直接有機化合物を酸化することはないが、塩基、金属イオン、遷移金属錯体などによって酸素分子を励起活性化してやれば、有機化合物さえも容易に酸化することができる。また、オゾンを生成する紫外線のように、電磁波の作用で活性酸素を作ることもできる。一方、生体内では酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)の働きで活性酸素がつくられ、過酸化物(パーオキサイド)が合成される。生体内で起きる酸化反応には、スーパーオキサイド、過酸化水素、水酸化物ラジカル、励起状態の酸素、脂質過酸化物ラジカルなどが関与していると考えられている。これらは活性酸素を含み、生体にとっては酸素毒として働く場合もある。活性酸素は、生活習慣病やガンとの関係があるのではないかと言われている。


光学異性体
分子式が同じであっても、立体的な原子配列が異なる分子が存在する。このような分子のことを異性体と呼んでいる。例えば、異なる4個の原子が結合している不斉炭素原子があれば、実像と鏡像の関係のように左右が反対の立体構造が存在する。これらの異性体は、化学的性質はまったく同じなので区別することができない。しかし、光学的性質でそれらを見分けることができる。光学的性質に注目した異性体を光学異性体という。光学異性体を見分けるには、偏光面を等しくする光を入射して、出てくる光の偏光面がどのように回転するのかを調べてやればよい。すなわち、右または左に偏光面を回転させる光学異性体の旋光性を見ることと同じである。なお、生物が体内で合成する光学異性体は旋光性がどちらか一方のものに限られている。ところが、人工合成によると、両方の旋光性が均一に混ざり合い、光学異性体を分離するのは難しい。生命現象の研究のために必要であるから、現在では、
自然分晶など物理的方法
光学活性な試薬を使う化学的方法
酵素などを利用する生化学的方法
不斉構造を持つ吸着剤を使うクロマトグラフティー
分子識別機能を持つ高分子膜の利用
などの方法によって光学異性体を分離することが行われている。




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