物構研談話会

日時: 2012-02-24 14:00 - 16:00
場所: 4号館2階輪講室1 東海1号館324室
会議名: 物構研談話会
連絡先: 川崎政人4347
講演者: 菱田真史  (筑波大学)
アブストラクト: 講演タイトル: 脂質分子の階層的自己組織化:巨大小胞構造の形成メカニズム と長距離水和状態 要旨: 両親媒性分子の一種であるリン脂質は水中で自発的に二重膜構造をと り、この二重膜構造は生体膜の基本構造として生命現象維持の本質を担っ てい ることが知られている。生体膜の機能を物理的な側面から理解するには、このリ ン脂質二重膜がどのように自発的に様々な構造を形成するのかを理 解すること が重要である。特に我々はこれまで、リン脂質二重膜間に働く相互作用に注目 し、この相互作用がメソスケールでのリン脂質の構造形成(た とえば小胞構 造)にどう関わっているのかを解明するべく研究を行ってきた。 本発表ではまず、人工細胞モデルとして近年盛んに利用されているリン脂質細 胞サイズ小胞(ジャイアントベシクル)の形成メカニズムに関する研究 につい てお話しする。顕微鏡およびX線小角散乱によるベシクル形成プロセスの観測結 果を示し、さらに膜間相互作用を考慮した速度論的な解釈を行っ た結果から、 ジャイアントベシクルの形成メカニズムの一連のモデルを提示する。さ らにそこから提案される新規なジャイアントベシク ル形成法についても述べる。 つぎに、リン脂質の周囲の水が脂質膜のメソスケールの構造形成に関わるのか どうかに注目して研究を行った結果をお話しする。発表ではまず、近年 急速に 発達してきたテラヘルツ分光法を用いることでリン脂質膜の水和状態を詳細に観 測できることを示し、その結果、脂質膜表面に存在する水和水が これまで信じ られてきたよりも長距離に及ぶことが明らかになったことを示す。この結果 は水和層の存在が膜間相互作用に影響を与え、脂質膜の メソスケールの構造形 成にも大きく関わっていることを示唆している。そこで最後に、脂質のメソス ケールの構造形成と水和状態との関係について調べ た最近の結果についてもお 話ししたいと思う。

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