物構研談話会

日時: 2012-04-05 16:00 - 18:00
場所: 4号館2階輪講室1 東海1号館324室
会議名: 擬一次元系BaVS3の金属絶縁体転移および価数揺動系YbInCu4の価数相転移の分光研究
連絡先: 中尾裕則4868
講演者: 佐藤仁  (広島大学放射光科学研究センター)
講演言語: 日本語
アブストラクト: 3d遷移金属化合物や希土類化合物などの強相関電子系物質は,局在性の強い3d電子,4f電子間のクーロン相互作用や,伝導電子との混成を通じて,金属絶縁体転移などの多くの興味深い物性を示す.我々は,強相関電子系物質が示す物性を電子状態の立場から理解するために,放射光を用いた(角度分解)光電子分光や吸収分光を主な手段として実験研究をすすめている.本セミナーでは,金属絶縁体転移を示す擬一次元系BaVS3と価数相転移を示す希土類化合物YbInCu4の電子状態に関する研究結果を紹介する.
1) 擬一次元系BaVS3の金属絶縁体転移
BaVS3はV4+(3d1)イオンが鎖状に配列する擬一次構造をとり,TMI=70 Kで金属絶縁体転移(MIT)を示す(高温側:
金属,低温側: 絶縁体).MITにはa1gバンド,egpバンドの両方が関わっていると考えられている.最近我々は,V
3p-3d吸収領域(hn=57
eV)での偏光依存角度分解光電子分光を行い,a1gバンドとegpバンドの分離観測に成功した.フェルミ準位(EF)上のa1gスペクトル強度はTMIより高い120-150
Kで急減し,一方egpスペクトル強度は温度とともに連続的に減少してTMIでゼロとなることが分かった.このことから,BaVS3のMITは最終的にはegp軌道の局在化によって生じると考えている.硬X線光電子分光(hn=6
keV),V 2p-3d軟X線吸収線二色性分光の結果についても紹介する.
2) 価数揺動系YbInCu4の価数相転移
YbInCu4はTv=42 KでYb価数3価(低温側)から2.9価(高温側)へ,構造不変のまま価数相転移を示す.我々はこれまで,この系について,光電子分光による価数相転移の直接観測を試みてきた.硬X線(hn=6
keV)を励起光に用い,Yb 3d内殻を励起することにより,急峻な価数相転移の直接観測に成功したので,その結果について紹介する.また,Cu
2p内殻スペクトル,Cu 2p吸収スペクトルの温度変化から価数相転移近傍での伝導電子状態の観測を試み,価数相転移のモデルを提案した.セミナーでは構造解析の結果もあわせて紹介する.

[index]