物構研談話会

日時: 2012-06-13 13:00 - 15:00
場所: 4号館2階輪講室1 東海MLF第一会議室
会議名: 物構研談話会(12-12)混合原子価希土類化合物のL3吸収端における共鳴X線発光の新しい 分光データとその理論: CeO2とCeFe2への応用
連絡先: 組頭広志 4917
講演者: 小谷 章雄 先生  (KEK、理研)
アブストラクト: 希土類化合物のL端励起共鳴X線発光分光(RXES)の実験として、従来は3d 2p発 光遷移による分光が盛んに行われていた。最近、ESRFのP. Glatzelらは、新し い分光実験として、CeO2のCe L端励起下で、valence 2pおよび5d 2p発光デー タの観測に成功し、筆者が不純物アンダーソン模型をもちいてその理論解析を おこなった[1]。本講演では、理論研究に重きをおきながら理論計算と実験結 果の比較をおこなう一方で、さらに一歩踏み出して、これらの分光の応用によ って切り開かれる新しい研究について述べる。
まず、valence 2p RXESは、3d 2p RXESと組み合わせることにより、L端励起下 での内殻正孔効果を直接に検知する強力な手段となることを指摘する。すなわ ち、valence 2p発光と3d 2p発光のスペクトル形状を比較し、両者の間に有意 の差があれば内殻正孔効果が重要、本質的な差がなければ内殻正孔効果は無視 できると結論してよい。そこで、われわれはこの方法を用いて、CeFe2に関す る懸案問題を解決した。CeFe2のCe L3端X線吸収スペクトル(L3 XAS)にはサテ ライト構造が観測されているが、その機構に関して2つの異なった解釈があ り、未解決の問題とされていた。朝倉ら[2]は、この構造は内殻正孔効果によ り基底状態の混合原子価成分が分離したものと解釈したが、その後Antonovら [3]は、これはCe 5dバンドの状態密度が直接反映された構造と解釈し、内殻正 孔効果は無視できるほど小さいと主張している。
われわれは、まず不純物アンダーソン模型によりCeFe2のvalence 2pと3d 2pの RXESを理論計算し、両者の間に大きな差異があることを確認した。次に、 Glatzelらと共同してこれらのRXESの測定をおこない、実験結果は理論計算と よく一致すること、したがって、CeFe2のL3端X線吸収スペクトルにおいて内殻 正孔効果は本質的に重要と判定することができた[4]。
最後に、5d 2p RXESは電荷移動励起(金属では近藤共鳴励起)の観測のための 有効で新しい手段となることを示し、今後の展開に期待したい。

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