物構研セミナー

日時: 2008-05-08 13:30 - 14:30
場所: PF研究棟2階会議室
会議名: 物構研セミナー「高温超伝導関連物質のCu Kα共鳴X線発光分光の理論」
講演者: 小谷章雄氏  (物構研PF・理研Spring-8)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: 最近ShuklaらによっておこなわれたLa2CuO4のCu Kα共鳴X線発光分光(RXES)の実験は、高輝度放射光を活用した研究のひとつの典型として興味深い[1,2]。われわれは、この実験が捉えた物理的内容を最大限に理解し、さらに、これに続く新しい実験の予測をするために、Cu5O16クラスターモデルによるRXESの理論解析をおこなっている[3,4]。  実験は、Cu1s-3d電気四重極子(EQ)励起によるCu KαRXESピークの近傍に、新しく微弱なピークが存在することを観測したが、これはCu1sから隣接Cuサイト上の3dへの非局所電気双極子(ED)励起であることが判明した。この非局所ED遷移によるRXESの構造を詳細に調べたところ、高温超伝導体に特有の興味ある多電子緩和過程を伴うことが明確になった。まず、新しい事実として、非局所ED遷移の励起状態は非局所遮蔽状態と局所遮蔽状態に分裂することがわかった。非局所遮蔽状態はCuO4プラケット間の電荷移動によって引き起こされ、その結果、Zhang-Rice singlet stateの形成を伴うが、局所遮蔽状態ではCuO4プラケット内の電荷移動だけが生じて、Zhang-Rice singlet stateは形成されない。La2CuO4のような2次元系とSr2CuO3のような1次元系のRXESの計算結果を比較すると、非局所vs局所遮蔽状態の励起強度比は2次元系の方が大きくなっている。これは非局所遮蔽チャンネル数と系の次元数の間の関係によって説明できる。また、2次元系に正孔または電子をドープした場合、非 局所ED遷移の強度は正孔ドープ量とともに増加し、電子ドープ量とともに減少することが明らかになった。 類似の現象は、他の遷移金属化合物においても観測される可能性があり、今後の展開に期待したい[2]。 [1] A. Shukla et al., Phys. Rev. Lett. 96, 77006 (2006). [2] F. de Groot and A. Kotani, Core Level Spectroscopy of Solids, (CRC Press, Taylor & Francis Group, 2008) Chapter 8. [3] A. Kotani et al., in X-ray Absorption Fine Structure - XAFS13 edited by B. Hedman and P. Pianetta (AIP, 2007) p.99. [4] A. Kotani et al., to be published in Phys. Rev. B.

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