物構研セミナー

日時: 2011-03-31 14:00 -
場所: 4号館2階輪講室1,2
会議名: 3-GeV級第三世代放射光施設における挿入光源
連絡先: 柳下 明
講演者: 北村英男  (理化学研究所X線自由電子レーザー計画推進本部)
講演言語: 日本語
アブストラクト: 今や世界の潮流となっている放射光施設のコンセプトは、高性能アンジュレータと極低エミッタンスリングとの組み合わせからなる比較的低エネルギー(3 GEV程度)の中規模放射光施設によって、大型放射光施設であるESRF、APSやSPring-8に匹敵する高輝度X線性能を得ることである。 もちろん、このコンセプトの中核となるのは、KEK-PFで開発されSPring-8で熟成された真空封止アンジュレータの技術であるが、直接的きっかけを与えたのは、1996年に、BNLがSPring-8と共同で開発した極短周期真空封止アンジュレータ(周期長11 mm、最小ギャップ3 mm)である。2.7 GeVという低いビームエネルギーでX線域の高輝度放射光が実現できることを証明したのである。この成功を端緒として、世界各国においてこのコンセプトに基づく放射光施設が建設された。スイスSLS、イギリスDIAMOND、フランスSOLEIL、中国SSRFがその典型であり、引き続いてスウェーデンMAX-IV、台湾TPS、米国NSLS-II等が建設途上にある。  このコンセプトは、あくまで高輝度X線を得ることを第一獲得目標としているが、軟X線域においてもおおいに御利益があることが期待される。しかしながら、3-GeV級の施設では、耐熱製の優れた光学系を用意できるX線域とは異なり、軟X線域分光系の主要デバイスとなるミラーや回折格子においては分解能を低下させるバンプエラーやカーボン付着が大きな問題となるはず。これを解決するためには軸上の放射パワーを抑制できるアンジュレータ設計が必要となるが、各国のSXビームライン計画案を見る限り、このような光源戦略が用意されているとは思えない。  本セミナーでは、新世代放射光施設のためのアンジュレータ技術(X線域ではクライオアンジュレータ等、軟X線域では低軸上パワーアンジュレータ等)について紹介する。Photon Factoryにおける光源戦略構築の一助となれば幸いである。

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