アブストラクト: |
軟X線を使った角度分解光電子分光により、Niのバルク・バンド構造について研究を行った。高エネルギー励起での角度分解光電子分光スペクトルには、非直接遷移による影響が現れ、この程度は、デバイ・ワラー因子によって記述される。本研究では、まず、このような非直接遷移による影響を調べるために、hν=780eVの軟X線を用いて角度分解光電子スペクトルの温度依存性を測定した。
次に非直接遷移による影響が無視できる程度の低温において、励起エネルギーを300eVから800eVまで変化させ、角度分解光電子スペクトルを測定することによって、Niのバンド構造の表面からバルクにかけての違いを調べた。その際、直線偏光を用いて実験を行い、双極子選択則を適用することによってバンドの対称性を特定した。軟X線角度分解光電子分光によって観測されたバルクのバンド構造の中で、真空紫外光を用いて得られたものと大きく異なる分散は、Δ_2の下向きスピンのバンドである。本研究では、このバンドがフェルミ・レベルを横切り、X_2↓のホール・ポケットがバルクにおいて存在することを明らかにした。
参考文献 N.Kamakura et. al., Phys. Rev. B 74(2006)045127 |