アブストラクト: |
近年、光電子分光のエネルギー分解能は高いもので1 meVを切り、様々な物質にお
いてフェルミ準位近傍の占有電子状態の観測が行われている。一方で、逆光電子分光
のエネルギー分解能は200 meV程度に留まっており、フェルミ準位近傍の非占有電子
状態を観測するために逆光電子分光装置の高分解能化が求められている。
我々は東京大学新領域創成科学研究科において、30 meVのエネルギー分解能を目標
とする真空紫外領域の逆光電子分光装置の開発を進めてきた。本装置では、試料から
放出された光を効率良く検出するために、試料、凹面回折格子、位置分解型検出器を
Off-plane Eagle 型に配置している。また、試料表面上において、光学系によって生
じる光のエネルギー分散と、平行平板型電子源によって作られた入射電子線のエネル
ギー分散とを一致させ、お互いの分散を補償させる Dispersion matching という新
しいアイデアを採用している。本装置は開発途中であり、現段階でのエネルギー分解
能は約500 meVである。セミナーでは、装置の原理とこれまでの開発経過を紹介す
る。 |