放射光セミナー

日時: 2007-04-25 16:50 - 17:10
場所: PF研究棟2階会議室
会議名: 放射光セミナー「テラヘルツ放射光利用の現状と大強度CSRテラヘルツ光への期待」
講演者: 木村真一  (分子研)
講演言語: 日本語
アブストラクト: 一般に,0.1〜100THz(3.3〜3300cm-1, 0.4meV〜400meV)をテラヘルツ領域と呼んでいる。この領域は,光と電波との境に位置しており,他の領域に比べて光源や検出器 の開発が遅れていたため,「テクノロジーギャップ」と呼ばれていた。しかしながら,格子振動や分子振動,半導体のエネルギーギャップ,伝導キャリアのプラズマ振動数,相互作用の強い系の準粒子など,物質科学の根本に関わる重要な情報を含んでいるため,古くから地道に研究が展開されてきた。そういった流れの延長上で,より先端的なテラヘルツ分光を目的としてUVSORに世界最初の共用ビームラインが出来たのは,20年以上前のことである。このビームラインの成功が発端となり,世界各地に赤外・テラヘルツビームラインが建設され,最近建設された放射光施設には,かならずといっていいほど,赤外ビームラインが設置・計画されている。これらのビームラインの主な目的は,汎用赤外分光系で用いられている黒体輻射光源に比較して桁違いに高い輝度及び強度を利用した回折限界空間分解能での分光やイメージング,極低エネルギーでの分光であり,汎用装置では困難な実験,例えば極限環境下での分光などが可能になった。 一方で,極端電磁パルスの生成と検出を用いたテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)は,簡便なテラヘルツ分光法として注目されるようになっており,基礎研究での利用も行われ始めている。 講演では,以上の利用研究の現状についてまとめ,将来ERLで可能になる大強度テラヘルツ光を利用した研究の方向性について考察したい。

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