放射光セミナー

日時: 2007-07-11 14:00 - 15:00
場所: PF研究棟2階会議室
会議名: 放射光セミナー「高秩序有機薄膜・関連界面のエネルギーバンド構造」
講演者: 山根 宏之  (名古屋大学大学院理学研究科、物質理学専攻(化学系)物性化学研究室)
講演言語: 日本語
URL: http;//pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: シンクロトロン放射光を利用した角度分解紫外光電子分光法(SR-ARUPS)は、物質の光学的・電気的特性を理解する上で重要なエネルギーバンド分散を直接調べることが出来る有効な手法である。分子性固体の分野では、(i) 分子内の強い共有結合の存在に起因する分子内エネルギーバンド分散(直鎖アルカン等)や、(ii) 分子間電荷移動やカルコゲン原子の導入によって分子間相互作用を意図的に強くさせた系に対して分子間エネルギーバンド分散が報告されている。しかし、一般的な有機半導体においては、分子間相互作用は弱いvan der Waals力によるため、そのバンド幅は非常に狭い。また、バンド分散測定に耐えうる高秩序膜の作製が困難なこともあり、有機半導体薄膜の弱い分子間π-π相互作用に起因する分子間エネルギーバンド分散の観測例は報告されていなかった。  千葉大・名大チームでは、種々の有機物質に対してその薄膜成長に関する知見を蓄積してきた。我々はこの知見を基に典型的な有機半導体であるペリレン誘導体物質の配向積層膜を作製し、精密なSR-ARUPS測定を行うことで、約0.2eVの幅を持つ分子間エネルギーバンド分散を観測することに成功した。これは、弱い分子間π-π相互作用に起因するエネルギーバンド分散の観測例としては世界初の結果であり、その後、スウェーデンやドイツのグループによってディスコチック液晶、ペンタセン等の種々の有機半導体について分子間エネルギーバンド分散の観測が報告されるようになった。  講演では上記の詳細の他に、最近の研究によって観測に成功した、基板を介しての分子間エネルギーバンド分散、および高秩序有機/金属界面における電子構造に関する議論を行う。

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