放射光セミナー

日時: 2007-07-12 11:00 - 12:00
場所: 構造生物実験準備棟会議室
会議名: 放射光セミナー「単純ヘルペスウイルスの免疫回避機能」
講演者: 錫谷達夫氏  (福島県立医科大学 微生物学講座)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト:  ヘルペスウイルスは70〜200個の遺伝子を持つ大型のDNAウイルスで、魚からヒトに至るすべての脊椎動物に固有のヘルペスウイルスが存在すると考えられています。このウイルスの特徴は宿主となる動物種に広く感染し、一度感染すると環状化したDNAを特定の細胞の核内に生涯にわたって存在し続けることです(潜伏感染)。 そして再度増殖を始めますが、重篤な疾患を起こすことはなく、娘ウイルスを新たな宿主に感染させ、種を保存します。生きた細胞でしか増殖できないウイルスにとって、ヘルペスウイルスの生活環は最も理にかなったもので、高度に進化したウイルスということができます。  一方、新たな宿主に感染を広げるために、ウイルスは免疫を持つ宿主体内で増殖しなくては成りません。そのため、ヘルペスウイルスは宿主の防御機構を制御する機能を持ち、その詳細がここ20年で明らかとなってきました。たとえばウイルスの感染早期に発現するIE47タンパクはTransporter associated with antigen processing (TAP)を抑制し、感染細胞の抗原提示を抑制します。Glycoprotein C は補体成分 C3b の、glycoprotein E はFc receptor のレセプターで、補体や抗体の機能を抑制します。また、UL41 遺伝子がコードするRNase は非特異的に宿主のmRNAを分解する結果、サイトカインの分泌や抗原提示を抑制します。  このような微生物の免疫回避機能の解析は、我々の免疫が微生物のどこを制御し、有効に微生物を排除しているのか、一方、微生物はどの機能から回避して我々の体内で生息できるようになったのかを明らかにし、長い我々と微生物の戦いの歴史を明らかにするものです。

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