アブストラクト: |
ワイドバンドギャップ半導体の酸化亜鉛(ZnO)は,多くの酸化物と同様,原子ドープにより電気伝導度や磁性などの物性を制御できる。水素原子はZnOに対して強い電荷ドナーとして振舞うことが2000年の理論研究により示されたが,水素ドープあるいは水素吸着によるZnOの電気伝導度の向上は,1950 年代には既に知られていた。従来は,ドープ領域での電荷蓄積層の形成により電気伝導度が向上するという説明していた。しかし,水素吸着ZnO表面をDFT 計算とSTM測定で検証した研究結果から,ギャップレスバンド構造の実現により表面が金属に転移するという機構が2005年に提案され,従来のモデルに対 して一石を投げかけることとなった。
本セミナーでは,どのような機構で水素吸着により電荷密度が向上し金属化がもたらされるのか,その時の価電子バンド構造はどうなっているのか,ZnO表面 の原子組成・原子構造の違いは金属化にどのように影響するのか,水素以外で金属化は誘起できるのか,といったいくつかの疑問を明らかにした研究結果を紹介する。 |