アブストラクト: |
要旨 開発中の画像用X線光学系 \'Owl\' および \'Trinity\' [1,2]を紹介する。屈折率
の異なる物体の境界面においてX線は進行方向に直角に屈折作用を受ける。この大き
さは10-6の程度である。さらにX線は進行方向に位相の変化を受ける。位相をpだけ変
化させる物体の厚さはほぼ数十mmの程度である。最近、放射光の指向性の高い こと
を利用して屈折画像ないし位相画像の開発が盛んである。ここに述べる方法は非対称
反射[3]を用いることを基本とする。この結果、X線波束の断面が 大きく なるので大
きい物体の撮影に適したX線光学系になる。さらに角度の発散が小さ いX線ビームが
用意されるので、これを用いると物体からの屈折作用を受けたX線の検出能力 が格段
に高まる。この原理にもとづく屈折コントラストを強調するX線光学系 \'Owl\' [1]
を考案し試験中であるので報告する。さらに、(a) X線光学系 \'Owl\'を用いた屈 折コ
ントラスト像、(b) Bonse &Hart型X線干渉計による位相コントラスト像および (c)透
過像すなわち吸収コントラストの3種類の像を同時に観察できるX線光学系\'Trinity\'
[2]を考 案し試験中 であるので合わせて報告する。このX線光学系はいままで不可視
であった物体の内部情報、 たとえば周囲が金属で内部が軽元素で成り立っている複
合材料等の材料、周囲および内部が同種の元素から成り立っているために内部が見え
にくかった物体、たとえば骨、化石 [4]等の内部画像情報を得ることに威力を発揮す
ることになろう。応用として医学,生物学,古生物学(化石学),工業材料等の内部の透
視に役立つものと思われる。
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