アブストラクト: |
光合成系は生命が38億年もの歳月をかけ,自然選択と言う圧力のもとで様々な試行錯誤
を繰り返した結果創成された,地球上における最高の光エネルギー変換機関です.実際に
光合成反応では,捕らえた光エネルギーを用いて太陽光発電を行っており,その意味から,
光合成系は自然が創造した太陽電池であると考えることができます.光合成反応の機能発
現には,蛋白質と言う反応場の中でクロロフィル(葉緑素)やカロテノイド(カロチン色
素)と言った,特定の環構造および共役鎖長を有した共役ポリエン化合物(光合成色素)
が空間的に規則正しく配列した,いわゆる超分子複合体が関係しています.生体による光
操作技術と言う観点から眺めた場合、この色素蛋白質超分子複合体は生命維持の目的のた
めに最適化されたバイオ・ナノ・デバイスと呼ぶことが提案されます.
今回の講演では,光合成光アンテナ捕集系および光反応中心複合体の分子構築と機能,
さらには人為的に色素構造を改変し蛋白系に再構築した人工の色素蛋白超分子複合体の創
成とその単結晶X線構造解析について,講演者の研究成果も交えながら話題提供したいと
思います.10フェムト秒を切る超高速過渡吸収分光を適用することにより初めて見えた,
カロテノイドの中間励起状態の発見[1]に関する話題や,チャープ制御したフェムト秒パル
スを用いた光合成反応のコヒーレント制御に関する最新の話題を提供したいと思います.
[1] G. Cerullo, D. Polli, G. Lanzani, S. De Silvestri, H. Hashimoto, and R. J. Cogdell, Science 298,
2395-2398 (2002). |