理論セミナー

日時: 2004-06-24 13:30 -
場所: 研究本館3階 321号室
会議名: 高密度ハドロン物質におけるK中間子凝縮と中性子星
連絡先: 丹後 敦子
講演者: 武藤 巧 氏  (千葉工業大学情報科学部情報工学科)
講演言語: 日本語
アブストラクト: ストレンジネス自由度の発現を伴う 高密度ハドロン物質相として, 中性子 星内部においては, $K$ 中間子凝縮, 及び通常の中性子星物質にハイペロン が混在したハイペロン物質の可能性が指摘されている。このように $K$ 凝縮 とハイペロン物質は同じ密度領域で実現すると考えられ, 両者の共存・競合関 係が問題となる。本講演では, カイラル対称性を基礎に, $s$ 波及び $p$ 波の$K$-バリオン相互作用を取り入れることによって, ハイ ペロン物質中での$K$ 中間子の分散関係を得, それに基づき$p$ 波の引力に起 因する$K$ 凝縮の可能性について検討する。主に次のような結果について報告 する。(i) $K^-$ の量子数を持つ $\Sigma^- $-$n$ 粒子-空孔励起モード と , $K^+$ の量子数を持つ $p$-$\Lambda$ 粒子-空孔励起モードの対凝縮が, 従 来の $s$ 波 $K^-$ 凝縮よりもやや低いバリオン数密度 で起こり得る。 (ii) よく発達した凝縮相では, $p$ 波相互作用の効果は大きく影響せず, 更 に高密度で$s$ 波の $K^-$ 凝縮相に移行する。ハイペロン混在による状態方 程式 (EOS) の軟化の上に, $K$ 凝縮による 軟化が加わるため, ハイペロン 物質中での $K$ 凝縮相の EOS は 軟化の程度が顕著になる。その結果, 中性 子星の表面まで $K$ 凝縮相であるような自己束縛星が存在し得る。 講演では, 自己束縛状態の安定性や, 深く束縛された$K$ 中間子原子核との 関係についても議論する。

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