理論セミナー

日時: 2008-12-16 14:00 - 15:00
場所: 研究本館3階321室
会議名: 1次元クーロンポテンシャルの経路積分と量子力学
連絡先: 市川翼
講演者: 迫田 誠治  (防衛大学校応用物理学科)
アブストラクト: 1次元特異ポテンシャル系の量子力学は、理論的興味だけでなく、量子細線における光吸収の測定など、低次元物性実験の側面からも多くの関心を集めている。特に1次元的な励起子の研究は1次元でのクーロンポテンシャルの特異性と関連して極めて重要である。1次元励起子については、1959年のLoudonによる論文で基底状態が無限大の束縛エネルギーをもつことが報告されて以来、いろいろな角度から検討されてきた。束縛エネルギーが無限大では、存在したとしても観測できないはずで、非物理的な状態と言わざるを得ない。特異ポテンシャルの場合に経路積分を構成する方法として知られている、Duru- Kleinertの方法で問題を解いてみると、厳密な計算が可能で、得られた束縛状態のスペクトルに上記の非物理的な状態は存在しない事が示される。ただ、こうして構成した経路積分からは自動的に(おそらくポテンシャルの特異性のために)Dirichlet型の境界条件を満たす固有関数による展開が得られてしまう。この問題を避けて、より一般の境界条件の下での量子論的状態について議論するために、Hamiltonianの自己共役性に注意を払いながら、散乱理論による考察を行うと、これまでに報告されていたものとは異なる結果が得られる事がわかった。結果は、光吸収等の実験に直結するものであり、量子論の基礎的な問題を慎重に検討する事が今後の低次元物性の研究において重要な意味を持つ事を示すものと言える。

[index]