理論セミナー

日時: 2008-11-21 13:30 - 14:30
場所: 研究本館三階321号室
会議名: 反対称化分子動力学法によるハイパー核の研究
連絡先: 土手, dotepost.kek.jp
講演者: 木村 真明  (北海道大学 創成科学共同研究機構)
講演言語: 日本語
アブストラクト: 陽子と中性子からなる原子核は、その核子数や励起エネルギーによって、その姿を様々に変化させる。軽い原子核では従来の殻模型によって理解できる状態(シェル的状態)だけではなく、いくつかのα粒子などの塊(クラスター)に分かれた状態(クラスター的状態)が現れる。最近の研究によれば、このようなシェル的構造とクラスター的構造がsd-shell領域の原子核では共存することが示唆されている。 このように多彩な構造を示す原子核を、今までに反対称化分子動力学法(AMD法)を用いて調べてきた。 AMD法では原子核を完全に微視的に取扱い、構造に関しなんら仮定を置かない。そのおかげで原子核の多彩な構造を柔軟に記述でき、多くの状態の説明に成功してきた。 さて現在、北大グループではAMD法を用いたハイパー核の研究を進めつつある。ハイパー核とは通常核にΛやΞなどハイペロンが加わった原子核であるが、これら核子とは異なる粒子が加わることで、より原子核の構造は多彩になるであろう。また来年1月からはいよいよJ-PARCも始動し、 Λハイパー核やΞハイパー核に関して豊富な実験データが得られると期待される。今回の講演では、AMD法を用いた通常原子核の研究において、シェル的構造とクラスター的構造の例を紹介した後に、以下の二つの話題について報告する。 1.Λハイパー核における構造変化 Λが加わることで、sd-shell核でのシェル的状態とクラスター的状態のレベル順位が変化するかもしれない。 2.Ξハイパー核12ΞBe実験によるΞN相互作用決定可能性 J-PARCのDay-1実験の一つにΞハイパー核12ΞBe探索実験がある。現在のところΞN相互作用はΛN相互作用以上に分かっておらず、これまでの実験データと矛盾しないものが3種存在している。 J-PARCで行われる12C(K-,K+)12ΞBe反応のスペクトルを AMD波動関数を用いて計算した結果、反応のスペクトルを見ることで、既存のΞN相互作用のどれが正しいか決定できる可能性がある。

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