理論セミナー

日時: 2012-01-19 16:00 - 17:00
場所: 研究本館3階セミナー室
会議名: 有限密度QCDにおけるランダム行列模型の応用と複素ランジュバンシミュレーション
連絡先: 丹治 直人、tanji-AT-post.kek.jp
講演者: 佐野 崇 氏   (東京大学)
講演言語: 日本語
URL: http://research.kek.jp/group/www-theory/schedule.html
アブストラクト: 有限密度QCDの模型としてのカイラルランダム行列(ChRM)模型に対し、我々は二通りの応用を行った。  第一に、カイラル凝縮とダイクォーク凝縮を秩序変数としたChRM模型を構築し、有限温度密度相構造を研究した。QCD相互作用のもつ対称性か ら、クォーク・反クォーク、クォーク・クォーク相互作用の結合定数の比は一意に定まり、相構造も一意に得られる。3つのクォークフレーバの質量が 同じ時には、低密度側でカイラル対称性の敗れた相(ChSB)が、高密度側でcolor-flavor locked(CFL) 相が基底状態として得られる。また、udクォークとsクォークの間に質量の非対称性がある(2+1フレーバ)場合には、udクォー クによるダイクォーク凝縮のみの存在する2SC相が、ChSB相とCFL相との中間密度領域に現れる。  第二に、格子QCDシミュレーションの方法として提案されている、複素ランジュバン方程式を用いた方法を、ChRM模型を用いて試行した。複素 ランジュバンシミュレーションは、有限密度QCDにおける符号問題を回避しうる方法として提案されているが、数学的基礎付けが不十分で、シミュ レーションが正当化できるかどうか明らかではない。発表では、複素ランジュバンシミュレーションに対する現状の理解をまとめてレビューし、その 後、ChRM模型の厳密解と数値解を比較する。複素ランジュバンシミュレーションは、一部の領域で解析解を再現できないことが発見され、その理由 を、符号問題とあわせて考察する。

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