News Asian Accelerator Plaza 日本語

ACFA/IPAC'13加速器賞の受賞者が決定

ACFA (アジア将来加速器委員会)とIPAC'13(第4回国際素粒子加速器会議)は、この度ACFA/IPAC'13加速器賞の受賞者を発表しました。

ACFA/IPAC'13加速器賞は、加速器の分野で優れた成果を上げ、本分野に特別な貢献をした人物に贈られる賞で、3年に一度IPACがアジア地域内で開催される年に授与されます。 2013年1月に本賞の選考委員会(委員長:Jia-er Chen, National Natural Science Foundation of China)が開催され、以下の3名の受賞候補者が選定されました。授賞式は上海にて開催されるIPAC'13において執り行われます。

A賞

A賞は年齢を問わず加速器分野で優れた研究を行った者に授与される賞で、Shouxian Fan 氏(Institute of High Energy Physics(IHEP)教授、中国・北京)に授与されることになりました。
Fan氏は、長い研究キャリアを通して加速器物理及びその技術の発展に多大な貢献をされてきました。特に、中国では初めてとなる電子陽電子加速器(BEPC)の建設、またそれを用いた実験高エネルギー物理学を牽引し、中国における近代科学化の推進に尽力されました。
さらに、Fan氏はBEPCのアップグレードや上海放射光施設(SSRF)、中国核破砕中性子源(CSNS)、the Chinese Accelerator Driven Subcritical System for Nuclear Waste Transmutation(CADS)、さらには中国における加速器を用いた陽子線治療の発展にも大きな貢献をされました。
また、Fan氏は上記のような研究活動を広く国際的な協力のもとに推進したことで、中国と世界の国々との強い協力関係を築きました。

B賞

B賞は年齢を問わず、近年重要且つ独自の研究成果を挙げた加速器分野の研究者に与えられる賞で、今回は円形加速器やERL、FELのデザインやシミュレーション、さらに分析に広範に適用できるプラットフォーム、ELEGANTプログラムとSDDS(Self Describing Data Sets)の開発を行ったMichael Borland氏(Advanced Photon Source, アルゴンヌ国立研究所, 米国)に授与されます。
Borland氏は、ELEGANTを用いてLinac Coherent Light Source(LCLS)におけるコヒーレント放射が誘発するマイクロバンチング不安定性を予見し、後に実験により彼の理論が証明されました。彼の発見がきっかけとなって、現在でも研究現場では本事象についての活発な議論がなされています。
また、LCLSにおけるStart-to-Endジッタのシミュレーションの他、Borland氏は加速器のコントロールシステムのアプリケーションに使用されるツールキットプログラムの開発にも携わりました。彼のアルゴリズムや手法、ソフトウェアはAPS、BESSY、 ELETTRA、 LCLS、LHC、NSRRC、RHIC、Spring-8、TJNAF等の加速器施設において、数々のビームダイナミクスと非線形加速器の最適化の開発に用いられています。

C賞

C賞は優れた独自の研究成果を挙げ、本分野に貢献した若手研究者に与えられる賞で、受賞者にはリサイクルヘリウムガスを用いた次世代変位ストリッパー装置の開発を行った今尾浩士氏(理化学研究所、つくば)が選ばれました。
このストリッパー装置の特徴は、無限の寿命と効果的なストリッピング、さらに最も強力なウランイオンビームにおいてもビームを小さくできること、また理研のRIBFでマグニチュードの階級を上げてウランイオンビームの強度を上げることを可能にしたことは、GSIのFAIR、 MSU/ANLのFRIB、BNLのRHIC 等、世界中の重イオン加速器に重大なインパクトを与えました。この他、今尾氏は非常に小型且つ効率の良い陽電子アキュミュレーターの開発に携わり、CERNのASACUSA実験において反水素原子の生成の成功につながりました。

これらのACFA賞はは2013年5月13日から17日に中国・上海にて開催されるIPAC'13(http://www.ipac13.org)にて授与されます。

Source: ACFA website
ACFA/IPAC'13 Accelerator Prize Winners