KEKBの国際協力

2008.9.29掲載

Cornell大学のCesrTAプロジェクト

(1) 電子雲抑制試験用電極

電子雲不安定性の抑制は近年の陽電子/陽子蓄積リングにおける重要な課題となっている。ビームパイプ内に電子除去電極(Clearing Electrode)を設置する方法は、直接的で効果も大きく、また電磁石内でも使用可能な有望な解決法である。我々は、ビームパイプ内表面に薄い絶縁層と金属層を直接形成する新しい方法で電極を製作し、KEK Bファクトリー(KEKB)陽電子リングに設置してビーム試験を行った[1]。図1は試作した電極で、絶縁体、金属層の厚みを非常に薄くすることによりビームインピーダンスを小さく、かつ熱伝導を高めることができる。本電極および電子数測定器を備えた試験チェンバーを電磁石内(0.77 T)に設置し、電子雲に対する効果を調べた。図2は、水平方向電子数分布の電極電圧(Velec)に対する変化の一例である。電子数はVelecとともに単調に減少し、ビーム軌道付近(Collector No. 4)ではVelec = +300V時に約1/100程度と大幅に減少した。電子除去電極が電子雲不安定性の抑制に有効であることを陽電子リングでは初めて実証した。この電極は、同じく電子雲不安定性が大きな問題となるILC (International Linear Collider)の陽電子ダンピングリング(DR, Damping Ring)にも十分適用可能である。この電極構造を基本とした電子除去電極の試験が、現在DRのR&DのためにCornell大学を中心に進められているCESR-TAプログラムに組み込まれ、来年にも共同で実験を行う計画が進んでいる。
[1] KEK preprint 2008-28 A, to be published in NIM-PR-A (2008).

テキスト ボックス:    Fig. 1 Clearing electrode for test.  テキスト ボックス:    Fig. 2 Dependence of measured electron numbers on electrode voltage (Velec), where the beam current was 1.6 A with a bunch spacing of approximately 6 ns.
Fig. 1 Clearing electrode for test. Fig. 2 Dependence of measured electron numbers on electrode voltage (Velec), where the beam current was 1.6 A with a bunch spacing of approximately 6 ns.

(2) X線ビームプロファイルモニター(X-Ray beam profile monitor R&D