高エネルギー加速器研究機構 共通基盤研究施設

高瀬亘氏がKEK技術賞を受賞

高瀬亘氏がKEK技術賞を受賞

この賞は平成12年度(2000年)に創設され、KEKにおける科学技術上の優れた業績を表彰し、広く技術の発展に資することを目的としています。特に優れた技術開発及び改善・改良に係わる性能向上等に貢献したものとして、平成29年度は2名の技術者が選ばれました。2017年12月26日に表彰式、1月16日のKEK技術職員シンポジウムにおいて講演が行われました。

山内正則 機構長(前列中央)と受賞者 (著作権広報室に確認済)
受賞者左:高瀬 亘 氏(共通基盤研究施設 計算科学センター)
右:中村 惇平 氏(物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系)

今回受賞対象となった高瀬氏の課題名は「マルチユーザ環境においてITサービスのモニタリングをセキュアに行うことを可能とするシステムの開発」です。

大量のデータを取得する高エネルギー加速器実験においては、データ処理に必要な計算機設備の大規模化と分散化、それらを繋ぐネットワークの広域化が進んでいます。信頼性の高い計算機サービスを安定して提供するためには、各設備の持つプロセッサやメモリの状態、消費電力や温度といった稼働状況をリアルタイムで監視し、分析することが重要です。この目的のためにKEKやCERN(欧州合同原子核研究機関)などでは、モニタリングツールとして、データ検索のための検索エンジンElasticsearchとそれを可視化するツールであるKibanaを利用しています。しかしながらこれらには、複数利用者・グループ間で情報を共有するために不可欠な、利用者の認証・認可機能が備わっていませんでした。高瀬氏が開発したのは、このような機能を持つモニタリングシステムです。

KEK中央計算機システム。10,000コアのプロセッサ、13PBの磁気ディスク装置などを備え、大量の実験データの蓄積と解析を行う。

アクセスしてきたユーザが利用者本人であることを確認する「認証」と、その利用者がアクセスできる資源を管理する「認可」は、多数の利用者を持つシステムを安全に運用するために不可欠の機能です。しかしこれを実現するためにアプリケーション本体を修正してしまうと、本体のバージョンアップの度に修正作業が必要になってしまいます。高瀬氏はこれを本体と分離したプラグインとして実装することにより、独立した開発と、柔軟なデータ管理を可能にしました。19か月の開発期間と1400行のコードによって実装されたプラグインは「Own Home」と名付けられ、2017年からCERN IT部門のモニタリングサービスの一機能として採用されるなど、高い評価を得ています。



利用者、所属グループ毎のアクセス制御。「ダッシュボード」は、モニタリングの対象データを収集し、Kibanaによる可視化や分析を行うためのページ。

この研究の契機になったのは、高瀬氏が短期派遣制度によって2014年に1年間 CERNのIT部門に滞在し、ElasticsearchやKibanaのアクセス制御に取り組んだことでした。CERNやフランス国立原子核素粒子物理研究機関の計算センター(CC-IN2P3)でも問題となっていた、モニタリングツールにおける認証・認可機能の必要性が、帰国後のOwn Home開発に繋がりました。これらの機関のシステム改良に貢献したことも含めて、国際協力の成果と言えます。国際的大規模コラボレーションが不可欠な加速器実験において、ソフトウェア開発においても、日本の科学技術者の貢献が望まれています。今後も高瀬氏の活躍が期待されています。


国際会議International Symposium on Grid & Cloud 2017 (ISGC 2017)で発表する高瀬氏
リンク先
【KEKのひと #25】「計算機の膨大なデータを広く、使いやすく」高瀬亘(たかせ・わたる)さん https://www.kek.jp/ja/newsroom/2018/02/02/1300/
KEK技術職員シンポジウム http://www-conf.kek.jp/eng-sympo2017/
中村 惇平氏がKEK技術賞を受賞
https://www2.kek.jp/imss/news/2018/topics/0116KEK-Tech/

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