高エネルギー加速器研究機構 共通基盤研究施設

大口径超伝導双極磁石によるLHC高輝度化アップグレードへの国際貢献

2 mモデル磁石開発の成功と7 m実証機の製造開始

世界最高のビーム衝突エネルギー(13 TeV)を誇るCERN(欧州原子核研究機構)のLHC加速器では、宇宙誕生の謎を解き明かす新しい発見を目指し、日本をはじめ世界中から科学者が集まって実験をおこなっています。しかし今のところ、これまでの理論では説明できないような新現象は見つかっていません。発見の可能性を高めるには、統計量を増やして現在よりもさらなる精密測定を行う必要があります。このため、陽子ビーム同士の衝突頻度を現在の10倍以上に増大させるLHC高輝度化アップグレード(High-Luminosity LHC, HL-LHC)計画が立ち上がり、既に設備の建設も始まっています(https://hilumilhc.web.cern.ch)。

目標達成のためには、ビーム衝突点付近の超伝導磁石システム(図1)の飛躍的な性能向上が必要で、CERNだけでなく世界有数の研究機関が協力、分担して研究開発を進めています。KEKもその一翼を担っており、HL-LHCビーム分離用大口径超伝導双極磁石(D1)の開発を推進してきました。

D1超伝導磁石は、定格電流12000 Aにおいて口径150 mm内に磁場5.6 Tを発生しますが、そのときの電磁力はコイル1 mあたり150トンにも達します。このような強大な電磁力においても、1/10000以下の磁場精度を満足しながら、長時間安定して運転できることが求められます。また甚大な放射線(〜30 MGy)にも曝されるため、耐放射線性に優れた特別な材料を開発する必要がありました。

超伝導低温工学センターを中心とした研究開発チームは、これまでに3台の2 mモデル磁石を設計・製作(図2)し、性能を評価してきました。いくつかの困難がありましたが、目標とする性能をクリアすることが確認できました(図3)。

次のステップとして、2020年からはメーカーと協力して、実機と同じ長さの7 m実証機磁石の製作を開始します(図4)。順調に進むと、いよいよ実機磁石の製造が2021年から始まる予定です。

1 (右)HL-LHC最終ビーム収束部超伝導磁石システムと(左)超伝導低温工学センターが担当しているビーム分離用大口径双極超伝導磁石(D1)の断面図



図2 (上)所内で巻線中の超伝導コイルと(下)完成した2 mモデル磁石

図3 モデル3号機の1.9 Kでのトレーニングクエンチ。目標とする定格電流の108 %に相当するUltimate currentに到達できた。

図4 7 m実証機磁石の3Dモデル

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