(1) 時間分解XAFS法と化学反応のその場観察技術 |
放射光科学第一研究系 丹羽 尉博 |
時間分解XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)は化学反応進行下でのX線吸収スペクトルの変化を時分割で測定することができるテクニックであり、
材料化学などの分野を中心に広く用いられている。近年では検出器技術の発達により時間分解能はサブナノ秒にまで及ぶようになったが、
一方では試料に摂動を与えてから平衡状態に達するまでの時間が時間分解能に対して非常に遅くなるという新たな問題も明らかとなっている。 本発表では特に触媒反応用の時間分解XAFSセルを中心として、その場観察(in situ)を行うために開発された技術を紹介する。 |
(2) KENSに着任しての一年間と、これから |
物質構造科学研究所 瀬谷智洋 |
早い物で、私がKENSの技術職員として着任してから1年がたちました。 今回の技術交流会では、これまでに身につけてきた基本的な技術と、今後身につけるべき技術について発表したいと思います。 |
(3) KEK物構研NML実験系の安全機器の変遷について |
物質構造科学研究所 小林庸男 |
現在、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)は、共同で大強度陽子加速器計画(J-PARC)を展開している。
KEKの物構研中性子科学研究施設およびミュオン科学研究施設は、つくばキャンパスにて中性子中間子研究施設(NML)として実験を行ってきたが、
J-PARC計画の発足に伴い、物質生命科学実験施設(MLF)へと発展的移転を行った。 新旧実験施設においては、各々に対応した放射線被爆の防止策をはじめ、各機器の安全性の確保など様々な防護策が採用されている。 今回は、新旧実験施設の安全制御機器を比較し、両者の安全機器の変遷を紹介する。 |
(4) PFに異動してきて感じたこと |
放射光科学第一研究系 田中宏和 |
昨年の4月にPFに異動してきて、いろいろな方にお世話になりました。現在、真空紫外光〜軟X線のビームラインの建設とそれに引き続く調整を行っており、 今までとの違いと共通することなど、感じたことと、これから身につけたい技術について発表します。 |
(5) 機械工学センターの役割 超伝導空洞の電解研磨装置の建設に携わって |
機械工学センター 舟橋 義聖 |
ILC(国際リニア加速器)の建設でメイン加速器を超伝導で建設することになり、空洞の電解研磨工程が必須になった。 機械工学センターは、STF棟の南西の一室に研磨から縦測定用の組み立て工程までの作業をクリーンな状態で維持できる電解研磨システムを2基製作設置することになった。 最初のクリーンルーム建設から2基目の建設まで経験する事ができた。この研磨システムの建設過程を報告する。 |
(6) 技術の継承「J-PARCの建設に携わって」 |
加速器研究施設 工藤喜久雄 |
2002年から2009年にかけて7年ほどJ-PARCのPPS(Personnel Protection System 人的安全保護システム)いわゆる加速器の安全系のインターロックシステムの構築に携わってきた。 J-PARCの加速器はLINAC, RCS, MR と多段の加速器であり、各施設が完成したあと順次運転に入るといったスケジュールで建設が行われたため、それに合わせてPPSも構築していくことになった。 そのためJ-PARCのPPSは、KEKBと同様に各施設ごとにシステムを分散して設置する方式を採用した。 この様なシステム構成はKEKBの前身であるTRINSTANの建設時に前任者が考案したもので、中央と複数のローカル(LINAC, RCS, MRなどの各施設)にそれぞれシステムを設置し、 中央から3の状態(KEKBではFREE, LIMIT, KEEPOUT、J-PARCではAA, CA, NA)をローカルに指示することで、全体のシステムがそれに沿った動きをするというもので、 システムの追加やメンテナンスにうまく対応することが出来るシステムである。 このシステムとの関わりはTRISTAN-MRの建設途中からで、その設計思想やシステムについてTRISTANの終了まで、前任者から十分な指導を受けKEKBの開始とともに引継いだ。 この様な経歴であったためかJ-PARCでのPPSの構築という大変な仕事を引き受けることになった。 また引き受けたのが途中からであったため、PPSの重要性とその機能についての説明やグループとしての立上げも早急に行なうなど、その作業量は多かった。 J-PARCでのPPSの構築に当たっては、当初からこの加速器が陽子加速器であり、その建設場所の考慮等から、 国内の加速器のPPSとしては初めてと思われる2重化したシステムの採用や入退出のための2重ドアの設置など新しい試みを取り入れた。 そのため今までのPPSと比べて3倍もの作業量となってしまったが、関係者及び関係各社の協力を得てシステムを完成に持っていくことが出来た。 ここでは、ここに至るまでの経過とシステム全体の構成などについて簡単に説明したあと、PPSの構築過程で生じた受注業者の技術の格差や、 指導不足によって生じた間違いなど幾つかの問題を例として取り上げ、経験を含めた技術の継承が如何に大切かについて述べる。 |
(7) 40年を振り返って |
素核研 安芳次 |
KEKに入所してから40年近くになります。データ収集用計算機PDP11/45と読み出し回路CAMACに接し始めてからデータ収集分野にさまざまに関わってきました。 この歴史を振りかえり、今回のテーマである「技術の継承」として、若い人たちに何かメッセージを残せたら、と思います。 |