加速器ではビームは真空状態の金属管の中を走っているので直接見る事は出来ません。その為、加速器には様々なモニター機器を設置しビームの状態を観測しています。
一方でモニター機器を設置することは加速器の中身を変化させることになるので、ビームに影響を与え場合によってはビームをロスさせてしまいます。いかにしてモニター機器の性能を損なう事無くビームへの悪影響を押さえるかは技術者の腕の見せ所でもあります。
本コースでは、J-PARCのメインリングで使われているモニター機器について紹介すると共に、その一つである Direct Current Current Transformer(DCCT)についてモデルをつかった原理実習や、近く導入予定のOTRモニターを題材にネットワークアナライザを使ったインピーダンス測定やその低減作業を体験していただきます。
J-PARCは、リニアック、RCS、メインリング(MR)の3台の大型粒子加速器からなり、大強度の陽子ビームを用いた多種多様な実験をしています。加速器は電磁石、加速空洞、真空ダクト、モ ニターなど多数のコンポーネントで構成されています。Programmable Logic Controller (PLC)等を 各コンポーネントの機器に組込んで同様に制御できるようにすることで、加速器全体を巨大な1つの実験装置のように機能させて運転しています。また、リニアックは大強度陽子ビームを生成する最初の加速器として運転しています。 質の高いビームを下流の加速器、実験施設に供給するにはビーム診断装置が欠かせません。
本コースでは午前は大強度陽子ビームをテストベンチビームラインで計測し、ビーム の挙動を体験します。午後はPLCのプログラム実習を通して加速器制御の現場を体験 してもらいます。
J-PARC 物質生命科学実験施設では加速器で加速された陽子で中性子を生成し、さまざまな実験に利用されている。中性子実験では主に中性子の回折現象を利用した実験が行われており、大面積の2次元中性子検出器が用いられている。
本コースでは、中性子実験を支えているData Acquisition(DAQ)システムについて、サーバーの側面から解説します。検出器からの信号を測定データとして集積しているサーバーについて、分解、組み立てを通してサーバーの構成を知り、RAID構築やOSの導入、専用ツールを用いたサーバーの管理手法など、実験を支えるITインフラ技術について理解を深めることを目的とする。
茨城県東海村のJ-PARCの一部である物質・生命科学実験施設では、3GeVまで加速して、光の速度の97%にまで加速されたシンクロトロン(RCS : Rapid-Cycling Synchrotron)の陽子をグラファイト製の標的に衝突させて核反応を起こしミュオンを生成し、様々な実験に利用されています。このミュオン生成標的は、高温・高線量・真空という過酷な環境に長時間耐えながら世界最高強度のパルスミュオンを生成させる必要があり、回転機構や伝熱構造などに多くの工夫が施されています。
本コースでは、主に標的試験機を用いてミュオン生成標的の機構やモニタリングシステムの開発・保守を体験し、素粒子生成について理解を深めることを目的とします。
J-PARCは"大強度陽子加速器"、「陽子」を加速して取り出しています。これを一次陽子と呼びます。加速された一次陽子はスイッチヤード(約200m)を通って、ハドロン実験室の金属標的に当て、K中間子などの二次粒子を作り実験に使用しています。
お馴染みのパイ中間子はアップクォークとダウンクォークからなりますが、K中間子はストレンジクォーク(Sか反S)を持つ特異な中間子になります。そのK中間子を選別するためには静電セパレータと呼ばれる装置をもちいます。どのように欲しい粒子を選ぶのか紹介します。
そして、毎秒およそ106 個超のK中間子ビームが生成され、電磁石群をもちいて分光器としてのスペクトロメータが形つくられています。そこではどのように未知の粒子の質量を知ることができるか、その秘密を体験します。