第25回 令和6年度 高エネルギー加速器研究機構 技術職員シンポジウム「私たちが目指す技術職員のかたち」
・口頭発表
令和6年3月4日(火)
No 講演者 所属 報告タイトル 要旨
1 河元 信幸 山口大学 他機関の技術職員による専門分野の深化を目的とした専門技術研修実施報告 山口大学総合技術部では、マイスタートラックとマネジメントトラックのダブルトラック制を採用し、技術職員のキャリアパスを確立している。マイスタートラックでは職位を再構築し、技術力の向上に応じた職位を整備している。技術職員組織は、技術職員のキャリアパスに沿った成長機会(人材育成プログラム)を提供することで、必要なスキルや経験を獲得することが促進され、技術職員組織の人材育成戦略を強化することができる。本年度、人材育成プログラムとして@技術職員組織代表者による人的ネットワーク活用機会の構築支援を目的とした「瀬戸内地方における技術職員の専門分野活動報告」と、A特定のスキルや知識領域をより深く理解し、専門性を高めることを目的とした「専門技術研修」の実施を行なった。本報告では、Aの「専門技術研修」について報告するものである。
2 清水 貴史 核融合科学研究所 核融合科学研究所における若手技術職員のスキルアップ計画について 私たち技術部では、令和 4 年度 KEK 技術職員シンポジウムの公演をきっかけに、技術職員のスキルアップ計画を発案した。この計画は、若手職員を中心に自らが数年から 10 年先までに習得したい技術とその習得手段(研修など)を考え、実施することによるスキルアップを目標としている。
3 扇 充 東北大学 東北大学総合技術部が新たに企画・実施した新人職員、中堅職員対象の研修について 東北大学総合技術部では様々な研修を企画し技術職員の育成を行っている。その中で「東北大学総合技術部内の多様な技術の実技、講義を受講する事で研究支援に必要な技術、知識の幅広い習得、また異業種(技術)への理解、探求的な学びを深める事で将来における継続的かつ実践的な高い技術力を持つ技術者の育成を図る」事を目的に東北大学総合技術部が令和 6 年度に新たに企画、実施した研修がある。実施した研修は新人職員を対象とした「若手職員のためのスキルアップ研修」と中堅職員を対象とした「技術専門職員研修」の2つで、この研修を企画する運営側と受講する受講者はもちろんのこと、講師の育成も踏まえて企画をすることとし、それぞれの立場において有益な研修になるように構成した。この2つの研修について経緯から実施までの取り組みについて報告する。
4 佐々木 健 浜松医科大学 医学部・歯学部の解剖学教育に従事する技術職員の研修、自己研鑽、そして採用課題 医学部や歯学部における解剖学教育に従事する技術職員は、「献体(ご遺体)」を扱うという点で、かなり特殊な状況にある技術職員とみなすことができる。その技術職員個人の倫理観や使命感が業務に極めて大きな影響を及ぼすとともに、一つ間違えるとその所属機関や解剖学会、さらには解剖学教育の社会的信頼の失墜につながる可能性が非常に大きい。このため、技術職員と解剖学教員や解剖学会との連携は重要であり、解剖学会や関連団体が技術職員の研修を行っているほどである。また、技術職員自身も自ら研究会を組織し、研修会や研究発表会を毎年開催して自己研鑽を重ねている。一方、この技術職員の採用については様々な課題が存在し、さらにマンパワー不足の問題も相まって、将来的な展望も決して明るいとは言えない。
5 森 加奈恵 佐賀大学 Python with Copilot 当センターでは、職員全員がロジカルシンキングを身に着けるために、プログラミングに取り組むことにしました。月に1 回、90 分の時間を設け、まず HTML や CSS などの WEB 開発言語を学び、その後、ノンコーディングプログラミングとして Microsoft Power Automate に触れ、最終的に Python を学ぶという計画を立てました。私は講師を務めることになり、自己研鑽の比重が非常に大きかったです。Python でプログラムを作成した経験がなかったため、1 年かけて講師を務める中で、利用料金集計フローのためのプログラムをゼロから作成するに至りました。Python 未経験者でありながら講師を務められたのは、Copilot が協力してくれたおかげです。本発表では、Copilot とともに行ってきた研修内容や自己研鑽の結果について報告します。
令和6年3月5日(水)
No 講演者 所属 報告タイトル 要旨
1 小林 典彰 大阪大学 技術サロンによる技術の伝承と自己研鑽 大阪大学工学研究科技術部では技術サロンという他に類を見ないユニークな取組を実施している。従前より技術の伝承や新人の教育に大きな問題があった。これはそもそもの採用や研修をはじめとする人材育成体制の不備に他ならない。そこで上司が与えた課題や上司が承認のもと若手が自ら提案した課題に基づいて、到達目標、期間と費用を明確化しつつ活動を行うことで技術職員のスキルアップを目的としたのが技術サロンである。技術サロンでは各自の専門性を活かして相互に教育を実施することで、従来の熟練者から若手だけでなく中堅から若手あるいは若手から中堅、熟練者への技術の伝承が可能となる。そしてここで伝承されたスキルを用いて教員や学生の研究支援を実施することで大阪大学工学研究科の教育研究に大きく貢献している。
2 吉村 文孝 東海国立大学機構 名古屋大学 フィールド系技術職員の技術継承についての取り組みと課題 技術職員は多様な職場環境で技術支援業務を行っている。発表者らは東海国立大学機構統括技術センターフィールド技術支援室に所属しているが、実際に業務を行う場所は農場、牧場、演習林のような大学附属施設である。扱う生物も水稲、野菜、果樹、樹木、ウシ、ヤギ、ニワトリのように多様である。それぞれに対して必要な管理技術は異なるうえ、一回の栽培、生育に要する時間が長いほか、気候の影響を強く受けることになり、管理の再現性の確保を難しくしている。管理全体を一度に技術継承を行うことは困難と考え、発表者の担当業務(畜産)から技術の一部についての技術継承を試みたためその結果を報告し、得られた知見、課題について議論する。
3 武田 洋一 岩手大学 機械系技術職員の採用活動と人材育成の課題 雇用市場の競争激化、少子化、都市部への人口流出等により、地方大学における新卒採用は困難を極めている。特に、機械系技術職員のような専門性の高い職種では、人材確保が喫緊の課題となっている。本発表では、2022 年と 2023 年の機械系技術職員採用における取り組みを報告する。採用試験事務室の枠を超えた活動、自己研鑽、人材育成への取り組みを通して、地方大学における機械系技術職員の採用と育成の課題解決に向けた方策を探る。
4 中村 一 高エネルギー加速器研究機構 KEKでの採用活動と研修 採用するにあたって重要なことは技術職員という職種を知ってもらうことだと思っている。世間で大学で働くと職種と言って思い浮かぶのは教授や准教授になり、技術職員が見えていない。KEK では「仕事説明会」「インターンシップ」を行って技術職員を知ってもらう活動をしている。またこういうことをやっていること自体を知らせる活動も必要である。さてこうして苦労して採用した技術職員を成長させていくために、初任者研修、専門研修を行っている。今回はこの採用のための宣伝活動、研修について紹介する。
・ポスター
令和6年3月4日(火)
No 講演者 所属 報告タイトル 要旨
P-1 古海 弘康 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 昭和オヤジ課長の情念の組織論(2)

〜昭和 100 年!令和における『シン昭和』組織の課題を考える〜
令和は人手不足の時代であり、募集や採用面接を担当するわれわれ昭和世代の管理職は、求人に苦労することが日常となった。それに加え、新人の高い「離職率」が大きな問題としてクローズアップされてきた。苦労して採用し、手塩にかけて育成するからには、なるべく長く働いてもらえるような「接し方」も必要だ。もちろん採用面接には細心の注意も必要で、同じ組織で働く仲間として適切かどうかを厳しく見極めなくてはならない。このような話は管理職仲間でないと誤解される内容が少なくないので、オープンな場では具体的な事例報告はできないが、今回の発表では、一般的な課題を共有し、意見交換のきっかけとなれば幸いだ。上記のような背景もあり、今年度、東海・北陸地区の管理職有志による「国立大法人等技術職員管理監督者会議(東海・北陸地区)」を発足させ第1回会議を金沢大学で開催した。今後、技術職員組織の課題について踏み込んだ議論を重ねる場としたい。
P-2 荒木 栄 高エネルギー加速器研究機構 仕事体験(インターンシップ)活動について KEKでは、毎年夏季と冬季に3〜5 日程度の仕事体験を開催している。コロナ禍においては、オンライン活動のみであったが、現在はつくばキャンパスと東海キャンパスにて実際に体験してもらっている。参加者からは貴重な体験ができたと好評である。少しずつではあるが、KEK 技術職員への興味が湧いているようだ。
P-3 西崎 修司 京都大学 京都府の公的職業訓練「ハロートレーニング〜急がば学べ〜」施設の見学実習研修報告 京都大学総合技術部では、第 1 専門技術群(工作・運転系)技術職員を対象とした研修を毎年実施している。2018 年度は、京都府内における在職者向け職業訓練(能力開発セミナー)等を実施している公的職業訓練「ハロートレーニング〜急がば学べ〜」施設の見学実習研修を開催した。研修では、京都職業能力開発促進センター(ポリテクセンター京都)、京都高等技術専門校、京都障害者高等技術専門校、陶工高等技術専門校の施設見学・実習を実施した。ポスター発表では、この研修について報告する。研修の詳細は、京都大学総合技術部 技術職員研修実施要項及び報告集

https://tech.adm.kyoto-u.ac.jp/tech/training/

研修技術(研究)発表報告集 26 (2019.6)、頁 52〜65.に報告している
P-4 多田 康平 京都大学 技術者の文章作成およびSI単位改定に関する研修の実施報告 文章作成技術の向上とSI単位改定の情報共有を目指した研修を平成 30 年度に実施したので報告したい。文章作成については、技術職員は報告書や研究会要旨など文章を作成する機会が少なくないことを踏まえ、文章作成の基本、図・表・数式の挿入、物理量・単位系・有効数字、レトリックなどについて講義形式で研修を実施した。SI 単位改定については、令和元年 5 月 20 日の SI 単位の大幅な定義改定を見据え、これまでの単位の発展の歴史、基礎物理定数、SI 単位改定の内容などについて講義形式で研修を実施した。
P-5 植田 猛 高エネルギー加速器研究機構 KEKにおける「第二種電気工事士になろう研修」 KEK では加速器科学の実験を支えるため、技術職員が電気設備の工事を自ら行うほか、業者に委託することもある。これらの作業は危険を伴い、専門的な知識と技能が求められるため、電気工事士の資格取得が推奨されている。今回、専門研修として「第二種電気工事士になろう研修」を実施し、多数の応募者の中から選ばれた 5 名が受講した。その結果、全員が合格を果たした。本報告では、研修の内容、合格に向けた取り組み、およびその成果について報告する。
P-6 宮嶋 直樹 京都大学 技術士を目指そう 技術士は文部科学省が所管している国家資格であり、技術士制度は「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた優れた技術者」の育成を図るための認定制度である。科学技術は高度化、複雑化という状況にあり、技術者に求められる資質能力はますます高度化、多様化している。大学の技術職員においても、その立場や内容は技術ごとの専門性により様々であるが、高等の専門的応用能力を持ち、複合的な問題を解決できることが期待される。また、業務遂行の上で公衆の安全、環境の保全等、社会の持続可能性を確保するよう務めるという倫理観は我々技術職員も賛同できるものであると考える。技術職員が高度な専門性と倫理観を持つ技術者となり、また育成するためにどのような方法で継続的な自己研鑽及び指導ができるか議論する。
P-7 中澤 育子 宇都宮大学 宇都宮大学工学部技術部の現状とこれから 宇都宮大学は 6 学部からなる中(小)規模大学です。技術職員は全学としては組織化されておりませんが、2 学部に技術部があります。その中で、工学部技術部の現状についてと、取り組んでいること、これからについてお話しさせていただきます。工学部の技術職員はこの 5 年の間に 2 名の採用がありましたが、全体としては減員が進んでいる状況です。このような状況ですが、昨年度末から総合技術研究会の開催について考える機会をいただき、この 1 年、様々な調査・検討、学内外の色々な方々との意見交換を行ってきました。その中で、考えさせられたこと、あらためて気づいたこと、これからにつなげたいことについてもお話しさせていただきます。
P-8 戸所 泰人 大阪大学 分析系技術職員によるリモートシステムを活用した大学間で連携した共同学習 研究基盤の強化において、技術職員の人材育成が注目を集めている。どのように技術職員を育成し、活用するのか、全国で様々な取り組みがなされている。今回、オンラインミーティングシステムと分析機器のリモートシステムを用いて、多大学間で行っている共同学習について紹介する。
P-9 森 丈晴 高エネルギー加速器研究機構 加速器科学国際育成事業(IINAS-NX)における研究支援人材育成 高エネルギー加速器研究機構 (KEK)では 2022 年度から加速器科学国際育成事業(IINAS-NX)を開始し、人材育成のためにさまざまな支援や活動を行っている。技術職員を含む研究支援人材の育成も重要なミッションの一つとなっており、昨年は、機構外の技術職員を対象に、EPICS という制御システムの習熟を目的とした研修を行なった。今回は、その研修を中心に、IINAS-NX における研究支援人材育成の概要を紹介する。