ミュオン科学研究系活動報告2012(8~9月)

2012年10月3日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

 

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図1:MLF第2実験ホールに搬入設置された軸収束超伝導磁石系(写真右側がビーム上流、9月25日撮影)。 [拡大図(68KB)


1. Uライン

 7月の「超伝導湾曲ソレノイド磁石」の搬入・設置に引き続き、その下流側に位置する「軸収束超伝導磁石系」(東芝製)についても、先行してMLF実験棟でコミッショニングを行っていた静電粒子分離器以外のコンポーネント(超伝導磁石、ビームブロッカー、ビームモニターなど)がMLF実験棟に搬入され、全体の組み立て設置および真空試験が進行している(図1)。今後は電力、冷却水などの配線・配管作業、インターロック、制御系の整備を進め、10月18日のビーム供給開始に向けてUライン全体のコミッショニング準備を完了する予定である。
 また、超低速ビーム発生装置(高温タングステン標的および真空容器)、および超低速ビーム輸送系については、請負業者による製作が最終段階を迎えており、今年10月末の完成・納入に向けて検収・引き渡しの段取りが進んでいる。


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図2:Hライン上に設置されたHS1(写真右上方向、赤紫色のブロック)の下流側にピローシールを挿入している様子(9月13日撮影)。 [拡大図(172KB)


2. S/Hライン

 この夏予定されていたS/Hラインの基幹部にあたるM2トンネル内機器設置作業のうち、Sラインのそれについては7月末に予定通り完了した。8月にはHラインの作業が本格化し、放射化レベルの低い下流側からHB1(偏向電磁石)の設置作業が進められ、9月に入ってからは最も放射化レベルが高い標的チェンバーの直下流で、鉄遮蔽体(表面線量率〜数百mSv)を引き上げ、HS1(ソレノイド)およびピロシールを設置する作業が行われた。これによりHライン基幹部の設置作業も山場を超え、現在ユーティリティーの配線・配管や遮蔽体を戻す作業が進められている。


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図3:DΩ1に設置された新型陽電子検出系(上流側の6ユニット=96テレスコープ)。 [拡大図(132KB)

3. Dライン

 μSR分光器(DΩ1)を改善・強化するために先端計測グループと共同で開発を進めてきたAPDベースのモジュール型陽電子検出器は、32チャンネル(16テレスコープ)のユニット12台分の部品製作が完了・納入され、KEKでの組み立てとテストが行われている。テストの結果、半数の6台については組み込まれた電源系統に不具合が見つかり改修中であるが、動作が確認された残り6台についてはDΩ1への実装準備が進んでおり、10月中旬のビーム運転再開と同時にコミッショニングが行われる予定である(図3)。

◤ イベント

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図4:第2回領域会議の参加者による集合写真(於北大理学部会場前)。 [拡大図(1200KB)


新学術領域研究「超低速ミュオン顕微鏡」第2回領域会議

 表記会議が8月30日〜9月1日に北海道大学理学部を会場にして開催された(図4)。今回の会議は公開シンポジウム(共催:北海道大学,北海道大学理学院)をかねており、計画研究班進捗報告(4件)、口頭発表39件、ポスター発表20件が行われ、116名(学生21名)の参加を得て熱心な議論が行われた。発表分野の内訳では、ミュオン源(9件)、レーザー開発(5件)、触媒・電気化学反応(5件)、生命科学(4件)、スピントロニクス(5件)、磁性(16件)、超伝導(8件)、基礎物理(3件)と多岐にわたり、本領域研究の特徴である「学際性」が際立つものになっている。
 なお、会議直前の29日に開催されたプレスクールには、大学院生から領域外の研究者まで48名の参加者があり、μSRの基礎から素粒子、触媒、生命科学まで7人の講師による講義が行われて好評を博した。

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