ミュオン科学研究系活動報告2013(4~5月)

2013年06月03日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. Uライン

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図1:MLF第2実験室のレーザーハット内で組み立て・調整中の大強度ライマンα光レーザー発生装置。 [拡大図(119KB)


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図2:Uライン下流の実験エリアの様子(5/28)。2つの分岐のうち左側が最初の超低速ミュオン引き出しに用いられる。端部には分光器の一部が設置済みで、高圧ケージの支柱に囲まれている。 [拡大図(131KB)


 Uライン下流では、超低速ミュオンビーム発生に向けて静電光学系の設置およびミュオニウム共鳴イオン化用大強度レーザーの調整が進んでいる(図1)。このうち、レーザーシステムについては、科研費・新学術領域研究「超低速ミュオン顕微鏡」を原資として、理化学研究所の大石裕協力研究員、宮崎洸治特別研究員、斎藤徳人基幹研究所研究員、和田智之ユニットリーダー、岩崎雅彦主任研究員らのグループにより準備が進められてきたもので、現在大石、宮崎両氏が東海の現地にほぼ常駐する体制で作業が行われている。これと並行して、ミュオングループでは中村、三宅を中心にレーザーシステムを格納するクリーンルーム等を整備している。今後は、真空紫外光の輸送・診断系 やレーザー安全インターロック系など施設との連結部の調整が行われ、夏期シャットダウン前の超低速ミュオン取り出しを目指している。
 一方、共鳴イオン化されて生成される超低速ミュオンを30 keVに加速し、実験エリアまで輸送する静電光学系、および同ビームを用いてミュオン・スピン回転実験を行う分光器についても設置作業が進行しており、MCP検出器を端部においてのビームテストへ向けて準備が整いつつある(図2)。

 

 

 

2. Sライン

 H24年度補正予算により措置されたSラインの第1分岐までの建設準備は順調に進んでおり、施設改造のための放射線申請にむけてビームライン、コンクリート遮蔽、およびビーム運転時のインターロックの設計作業がほぼ完了した(図3)。ただし、5月末に予定されていた放射線申請手続きはハドロンホールでの事故を承けて見送られることになり、次回の申請時(半年後に予定)までは放射線遮蔽等の現状を維持する必要がある。そのため、Sライン開口部付近の機器設置等は当面手をつけられない状況となっている。なお、電源ヤード、キャットウォーク、コンクリート遮蔽については現在入札公告中であり近日中に開札される予定である。また、ビームラインの主要な機器である四重極電磁石についてはほぼ設計を終えて契約手続にむけた準備を進められており、キッカー、セプタム電磁石の各ビームライン機器についても設計を進めている。

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図3:MLF第1実験ホールのS1ビームラインレイアウト。図面はコンクリート遮蔽体の入札仕様書の一部として用意されたもので、新たに製作する部分が赤枠で示されている。 [拡大図(156KB)


◤ 大学共同利用

・共同利用実験実施状況

 MLFでも新年度より2013A期のビームタイムが開始され、Dラインにおいても4月半ばの加速器スタディによる停止期間を除き、5月第4週までに10件の一般課題、および1件のプロジェクト課題をほぼ予定通り実施することができた。
 しかしながら、既に報道等でも明らかなように、5月23日にハドロン実験施設で陽子ビームラインの誤動作に伴い発生した放射性物質による実験室の汚染と実験者の内部被爆、およびその一部がさらに実験室外へ漏洩するという事故が発生し、5月24日深夜以降J-PARC加速器の運転は全面停止となった。(なお、MLFではハドロン実験施設の事故に関連した職員・共同利用者の被爆等といった直接の被害は出ていない。)
 事故が放射性物質の一般区域への漏出という重大な結果を伴うものであったため、事故原因の調査・改善策の検討等に相当程度の時間を要すると見込まれ、本報告執筆時点(6/3)では今後の実験課題についての実施見通しが立たない状況となっている。そのため、MLF全体の措置として未実施課題の責任者に対し、実験のための出張・共同利用手続きをすべてキャンセル、もしくは見合わせることとし、実験課題の扱いについても次の指示を待つようにとの連絡がなされている。また、5月17日から2013B期の実験課題公募が開始されているが、前述の状況に鑑み、6月7日となっていた公募の〆切を無期限に延長することとし、今後の見通しが明らかになった時点で改めて〆切を設定、アナウンスすることとなった。
 一方で、このような事故を承けて、MLFにおいても安全管理体制、および緊急時・異常時の対応などについて現状の点検を行うよう指示されており、最大事故想定の見直し等も含め早急に対応すべく作業を行っている。

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