ミュオン科学研究系活動報告2015(10~11月)

2015年11月

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. セプタム電源復旧作業報告

 セプタム電源は工場検査において120 項目に及ぶ「保護機能試験(インタロック試験)」を実施し、複数の目によって安全面および性能面の確認が行われた。その後、MLF 安全審査会の承認を経て、10月17日にMLF 第2実験ホールへ搬入され(図1、図2)、設置場所において現地試験が実施された(10月18日~20日)。

 

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 図1:セプタム電源の搬入 [拡大図(557KB)

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 図2:セプタム電源の設置 [拡大図(569KB)

 

 輸送に伴い工場出荷時に切り離した部分の再接続箇所については、導通試験および絶縁抵抗測定を実施し、配管の水圧試験においては1 MPaで加圧1 時間水漏れがないことを確認した。操作確認においては主電源および小型電源のメインブレーカが排他的に切り替わることを実践し、次いで各電磁開閉器の動作およびアンサーバック信号の送受信を確認した。保護機能検査(図3)では、現地試験検査要領書の全ての項目において問題ないことを安全面の観点から再確認した(インタロック試験の実施)。また、性能検査として、電流リップルおよび電流安定度の測定によって性能評価を行い、いずれも仕様範囲内であることを確認した(図4)。

 

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 図3:現地試験(保護機能検査) [拡大図(602KB)

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 図4:小型電源の性能確認 [拡大図(537KB)

 

 本セプタム電源は、オフビームコミッショニング(10月22日~23日)を経て10月27日よりビーム運転(実験)に供され、コミッショニングに供されている。

 

2. Dラインコミッショニング

 Dラインでは、夏季シャットダウン中に設置された、超伝導ソレノイドを用いたビームコミッショニングが10月27日より継続的に実施されている。超伝導ソレノイドは順調に稼働してり、表面ミュオン・崩壊ミュオンともに良好な輸送状態を確認できた。今後は低エネルギー(~100 keV)負ミュオンの取り出しを進めていく予定である。
 図5に表面ミュオン取り出し地のミュオン強度のソレノイド磁場依存性を示す。表面ミュオンに特徴的な磁場依存性が確認できた。

 

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 図5:表面ミュオン取り出し地のミュオン強度のソレノイド磁場依存性 [拡大図(90KB)

 

3. スクレーパ作業報告

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 図6:取り外し予定のハローモニタ [拡大図(410KB)

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 図7:配管真空乾燥 [拡大図(311KB)

 ミュオンセクションでは今年度の夏期作業として、標的直下流のスクレーパの交換を実施した。9月3日に使用済みスクレーパをビームラインから引き出し、9月8日にビームラインに新スクレーパを導入した。使用済みスクレーパの残留放射線量はスクレーパ表面より70 mm 離れた位置で毎時1.5 Svであった。ビームラインに設置された新スクレーパの冷却水配管、信号線は復旧され、真空排気(3×10-5Pa 以下)も完了し、10月24日に800 kW大強度試験を行った。加速器のビームロスの影響で、連続運転は出来なかったが、800 kW運転を実施し、実験ホールの主要箇所の空間線量の計測を実施し、問題ない事を確認した。現在は500 kW による利用運転を継続しており、昨年度、導入した回転標的も順調に稼働している。今回、スクレーパを交換したのは、スクレーパ前面に取り付けてあるハローモニタの影響でスクレーパ本体の温度を適切に計測できなくなったことにあった(設計値35 ℃、実測値75 ℃ @300 kW)。ハローモニタは現在、使用していないので、新スクレーパでは取り付けていない。今RUNの500 kW 運転では実測値は42℃なので、かなり設計値と近い。以後は、適切にスクレーパの温度計測が出来る事が確認できた。使用済みスクレーパは真空容器内に保管されている。ハローモニタを取り外せばスクレーパ予備機として使用可能なので来年度以降、遠隔操作で取り外す事を計画している。使用済みスクレーパの冷却水配管には、交換時に取り除き切る事が出来なかった冷却水が残存している。ビーム運転を継続しながら、真空乾燥を実施している。

 

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図8:新スクレーパと旧スクレーパの500 kW 運転時の温度比較。新スクレーパでは適切に温度計測出来ている。 [拡大図(225KB)

 

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