2016年 5月
1. ミュオン回転標的安全監視系の開発
ミュオン回転標的においては、1 MWにおいても放射線や熱による損傷は分散されて問題にならないと見込まれている一方、回転シャフトを支持するベアリングの損傷によって寿命が決定されている。
現在、この回転系の監視のためにモータートルク値を測定しており、規定値に達するとビームを停止させるインターロックを設定している。我々
は、この回転系インターロックの多重化を目的として、マイクロフォンによるモーター音響の監視を計画している。
現在、予備実験として回転モーター近傍にマイクロフォンを設置し、音響データの収集・解析を行っている。図1は、Run67における回転モーター
停止時と動作時の音響を比較したものである。回転モーターの動作に伴って8000 Hz付近に鋭いピークが観測されている。ビーム運転の有無に関わ
らず同じトルク、同じ回転方向において、このピークの音圧レベルは、アンプ出力後でどちらも-70 dBであり再現性がみられており、インターロック設定のために重要な音源と考えられる。現在はトルクや回転速度、マイクロフォン位置を変化させた音響データの収集試験をヘンデル棟にて準備中であり、このオフライン試験と合わせてインターロック設定のための音圧レベル定量化を目指している。
2. Sライン: ビームコミッショニング
3月上旬のビーム停止期間に元素戦略で準備されたμSR分光器をS1実験エリアに設置し(右写真)、この分光器を用いたコミッショニング(S型課題)を開始した。コミッショニングの目的としては主に二つあり、ひとつはそれまで実施してきたビームプロファイル観察によるビームチューニングから、さらに一段階進めて、より小さな測定ターゲットにより多くのミュオンを止めるというS/N比に重点を置いたチューニングを行うことにある。その目的達成のため、これまでUライン、Dラインでのコミッショニングにおいても威力を発揮してきた自動チューニングプログラムForTuneをSラインにおいても投入し、μSR検出器を用いたカウント数測定によるコミッショニングを試みた。結果、16 ✕ 16 mm2の試料サイズで1.5 ✕ 104μ/sで測定できる状況まで至った。これは同等の試料サイズでDラインにおけるデータ取得レートのおよそ半分である。
今後さらなる改良を目指して、コミッショニングを継続していく。