ミュオン科学研究系活動報告2016(9月)

2016年 9月

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. 装置整備・開発等

・回転標的上下駆動機構保守作業(長期保守作業)

 2014年9月に交換したミュオン回転標的の上下駆動機構保守作業を実施している。2年間のビーム運転を経て、安定した運転が出来る目途がついたので、より長期の高強度運転に備えるために、これまでゴムOリングを使用していた真空締結部を金属ガスケットに交換した。以後、大気から加振空中へ回転動作を伝達する回転導入機の交換を予定している。

・長期保管容器格納遠隔コミッショニング(長期保守作業)

 使用済みミュオン標的は高度に放射化(毎時5 Sv)するために、遠隔操作にて交換を行う。取り外されたミュオン標的は切断装置によって分割、減容され、長期保管容器内に格納される。2014年に、ミュオン標的の高放射化部を容器内に格納する遠隔コミッショニングを実施した。今年度は、残りの中放射化部と低放射化部を分割して長期保管容器内に格納することによって、更に減容する。フル遠隔操作を模擬した試験を8/29-9/2に実施した。2008年より開始した遠隔操作コミッショニングによってフル遠隔操作で使用済みミュオン標的を遠隔操作で新標的に交換し、減容処理を行い、容器内に格納できる事を確認した。

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   図1:回転標的上下駆動機構 [拡大図(483KB)

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  図2:フル遠隔操作で標的模擬体を切断装置にて
    切断して減容を行い容器内に格納している。 [拡大図(483KB)

 

2. Hライン遮蔽体建設進捗状況

 平成26 年度補正予算で製造したMLF 第1 実験ホール遮蔽体(Hライン)の据え付け作業を6月29 日に開始し、8 月下旬でほぼ完了した。ビームライン上流、M2 トンネル出口付近の遮蔽体から設置を開始し、実験エリアまでの側面遮蔽体及び天井遮蔽体の設置が完了している。慎重に作業を進めているため当初の工程より10 日間程度の遅れを生じたが、大きなトラブルもなく、また設置した遮蔽体の干渉等の不具合もなく、順調に設置作業は進行した。全ての遮蔽体の設置が完了した段階で最終的な測量を行い、遮蔽体の設置位置、厚さなどの記録を取る予定である。11 月初旬に予定されている放射線変更許可申請に伴う施設検査ではその記録をもとに検査官への説明を行う予定である。

 

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 図3:補正予算で製作したH ライン遮蔽体設置工事写真 [拡大図(315KB)

◤ イベント・会議

・超低速ミュオンが拓く科学シンポジウム/新学術領域会議(8月27-27日,IQBRC)

 物質・生命科学実験施設(MLF)ミュオン実験エリアのUラインでは、今年2月に初の超低速ミュオン発生に成功し、6月末までの前期運転終了までに試料からのミュオン崩壊陽電子崩壊スペクトラムの観測に成功した。これらのことを記念して、8月25日には、領域関係者を対象とした、超低速ミュオン実験装置のお披露目式が執り行われた。さらに、引き続き、8月26日、27日の両日、新学術領域メンバーが参集し、これまでの研究成果を基に新しい超低速顕微鏡の可能性について議論する公開シンポジウムが開催された。写真は、いばらき量子ビーム研究センター(IQBRC)において開催された公開シンポジウムの全体写真である。
 シンポジウムでは、領域代表の鳥養映子氏の全体説明、三宅康博氏(KEK主幹)、門野良典氏および和田智之氏(理研)等、による班長報告に引き続き、領域関係者の研究成果紹介など約40件の研究発表が行われ、活発な意見交換が交わされた。

 

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 図4:超低速ミュオンが拓く科学シンポジウム/新学術領域会議の集合写真 [拡大図(315KB)

 

 

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